おとなの養生訓

おとなの養生訓 第78回「魚離れ」 消費減少、売り方に原因

2015年10月23日 09時20分

 日本人は魚介類を食べなくなってきたようで、それを「魚離れ」と呼んでいます。それは日本の食卓が欧米化して、魚より肉を食べるようになったからだ、と誰もが説明しますが、果たしてそうなのでしょうか?

 実は違っているのです。日本人の肉類の消費量は、1980年頃までは急速に増えていたのですが、そのあとは徐々に増えて、1990年頃にピークとなり、その後、横ばいです。牛乳乳製品も1995年ごろにピークに達しました。

 一方、魚介類は1975年ごろまで消費が増え、その後、横ばいでした。つまり日本の食卓の欧米化は1980年代には完成していたが、それでも魚介類は食べられていたのです。

 では、いつごろから魚離れになったのかというと、ここ10年ぐらいというのが、統計の正しい見方でしょう。業界の方は少しでも消費が減れば、大問題かもしれませんが、こういう統計では年々のデータに凸凹がつきものです。トレンドで見ると、やはりここ10年ぐらいというのが妥当だと思います。つまり欧米化は魚離れの直接の原因ではないのです。

 実際、日本人が本当に魚を食べなくなったのなら、日本中どこにでもある、回転ずしや通常のお寿司屋さん人気は、説明できません。魚離れしているといわれる子供たちも、お寿司は大好きですよ。

 歓楽街に出ても、依然として一番多いお店は、居酒屋、板前料理、炉端焼き、郷土料理、ついでに赤ちょうちんなど、魚介類がメニューの中心であるお店です。うまい刺身や焼き魚はお酒のお供に最高です。

魚の消費が落ち始めている原因は、売り方にあると思っています。2003年以降、日本では共働き家庭の割合が増え続けています。つまり、家庭で調理をする余裕が失われています。

 なのに、いまだにスーパーで売られている魚介類は、さばきをしないと食べられない形態が多いのです。もちろん切り身も多くなりましたが、刺身も相変わらずさくで売っている方が多いのです。

 大体、肉で内臓と一緒に売っているものがあるでしょうか?肉は基本すぐに焼けるし、手軽に使えます。でも、魚はいまだに尾頭、内臓付きで売っているのです。これでは家庭で魚介類を食べる機会は減るに決まっています。でも、魚は嫌いじゃないから、回転ずしや居酒屋では魚を食べるのです。手間いりませんから…。魚屋の意識革命が必要です。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


おとなの養生訓 一覧へ戻る

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

北海道建設新聞社新卒・キャリア記者採用募集バナー
  • 古垣建設
  • web企画
  • 北海道水替事業協同組合

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

丸彦渡辺建設が31日付で清水建設の子会社に
2023年05月12日 (16,677)
上位50社、過去16年で最高額 22年度道内ゼネコ...
2023年05月11日 (8,418)
ラピダスの工場新築で関連企業から多数の問い合わせ
2023年05月25日 (6,552)
熊谷組JV、道新幹線トンネル工事で虚偽報告
2023年05月08日 (5,926)
砂川に複合型施設オープン シロの福永敬弘社長に聞く
2023年05月22日 (4,830)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓 new

おとなの養生訓
第255回「内臓脂肪蓄積」。ポッコリお腹は悪性肥満、生活習慣の改善が必要です。

連載 ごみの錬金術師

ごみの錬金術師
廃ガラス製品を新たな姿に。道総研エネ環地研の稲野さんの研究を紹介。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第30回「職業的背景で変わる視点」。経営には慎重かつ大胆なバランスの良い判断が必要となります。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第32回「確実に伝えたい色」。青と黄色は色覚に左右されにくい「伝える色」です。