日本人は魚介類を食べなくなってきたようで、それを「魚離れ」と呼んでいます。それは日本の食卓が欧米化して、魚より肉を食べるようになったからだ、と誰もが説明しますが、果たしてそうなのでしょうか?
実は違っているのです。日本人の肉類の消費量は、1980年頃までは急速に増えていたのですが、そのあとは徐々に増えて、1990年頃にピークとなり、その後、横ばいです。牛乳乳製品も1995年ごろにピークに達しました。
一方、魚介類は1975年ごろまで消費が増え、その後、横ばいでした。つまり日本の食卓の欧米化は1980年代には完成していたが、それでも魚介類は食べられていたのです。
では、いつごろから魚離れになったのかというと、ここ10年ぐらいというのが、統計の正しい見方でしょう。業界の方は少しでも消費が減れば、大問題かもしれませんが、こういう統計では年々のデータに凸凹がつきものです。トレンドで見ると、やはりここ10年ぐらいというのが妥当だと思います。つまり欧米化は魚離れの直接の原因ではないのです。
実際、日本人が本当に魚を食べなくなったのなら、日本中どこにでもある、回転ずしや通常のお寿司屋さん人気は、説明できません。魚離れしているといわれる子供たちも、お寿司は大好きですよ。
歓楽街に出ても、依然として一番多いお店は、居酒屋、板前料理、炉端焼き、郷土料理、ついでに赤ちょうちんなど、魚介類がメニューの中心であるお店です。うまい刺身や焼き魚はお酒のお供に最高です。
魚の消費が落ち始めている原因は、売り方にあると思っています。2003年以降、日本では共働き家庭の割合が増え続けています。つまり、家庭で調理をする余裕が失われています。
なのに、いまだにスーパーで売られている魚介類は、さばきをしないと食べられない形態が多いのです。もちろん切り身も多くなりましたが、刺身も相変わらずさくで売っている方が多いのです。
大体、肉で内臓と一緒に売っているものがあるでしょうか?肉は基本すぐに焼けるし、手軽に使えます。でも、魚はいまだに尾頭、内臓付きで売っているのです。これでは家庭で魚介類を食べる機会は減るに決まっています。でも、魚は嫌いじゃないから、回転ずしや居酒屋では魚を食べるのです。手間いりませんから…。魚屋の意識革命が必要です。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)