忘年会シーズンです。宴会が断続的に続く予定の人も多いと思います。宴会はウイークデーに開かれ、仕事を終えた後の夕方に開催されることがほとんどです。つまり、一日の疲れを持ったまま、宴会に入るわけで、そのことが原因でトラブルが起こる可能性があるのです。
宴会というと、大きな会になればなるほど、「挨拶」というのがつきもので、一人で終わればいいのですが、場合によっては、「挨拶」が終わってから、「乾杯の音頭」というのがあったりします。これはつまり挨拶なので、都合、10―20分ぐらい、ごちそうを前にして待たされることになります。もちろん黙っておとなしくしていなければなりませんから、実はストレスで、体は緊張します。一日の疲れと緊張は胃腸の動きを止めてしまいます。
そこで、ついに乾杯、ビールやシャンパンなど発泡するお酒を一気に流し込みます。こうすると、胃はアルコールと炭酸の刺激で一気に胃液を分泌してしまいます。つまり、急な刺激で胃がびっくりしてしまうようなものです。
お昼以来何も食べていない人が大半ですから、空っぽの胃に大量の胃液が分泌されると、胃の粘膜を傷めてしまう可能性が高くなります。軽く炎症が起こっているといっても過言ではありません。
もし、宴会前の待ち時間にコーヒーなど飲んでいると、その刺激もあいまって事態は悪化します。緊張と大量分泌した胃液で調子を崩した胃に大量の食べ物が投入され始めます。胃の運動は低下しているので消化は順調に行われません。
お酒の勢いも手伝って、豪華なごちそうをどんどん食べてしまいますので、胃の中には食べ物がどんどんたまってしまいます。胃には食べ物を貯めるために一旦膨れるという反応が起こるのですが、お酒を飲むとこの反応が強くなります。お酒を飲むと普段より多く食べてしまう人がいますが、原因の一つはこれです。
こうして、限界まで大きくなった胃はついに耐え切れなくなり、中に貯まった食べ物を排除しようと悪心、嘔吐が起こります。大体、宴会の後半で起こります。トイレに駆け込み、なかなか出てこられなくなります。
対策は、宴会前にコーヒーを飲まない。乾杯の時は一口ぐらいにしておく。食べ物は意識的にゆっくり食べる。一気飲みは、本人の意思としても厳禁です。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)