おとなの養生訓

おとなの養生訓 第83回「消化管」 栄養豊富で料理に利用

2016年01月08日 08時52分

 動物は食べ物から栄養を吸収するために消化管を持っています。口から肛門まで、順に食道、胃、小腸、大腸と並んでいます。栄養を吸収するための器官であるからなのか、分かりませんが、栄養豊富な食材として利用されているのは、ご存じのとおりです。

 本来の肉、すなわち骨格筋と違って、値段が安いせいもあるのでしょうか、庶民的な食材として利用されています。まず、何と言っても、焼肉でしょう。ミノ、ハチノス、センマイ、ギアラは牛の胃。ガツは豚の胃。モツ、ホルモンは豚の腸。コプチャン、コテッチャン、シロ、マルチョウは小腸。テッチャン、シマチョウは大腸です。モツは煮込み料理にも使われます。

 ヨーロッパでも消化管は様々な料理に使われています。イタリア料理では胃と腸はトリッパと呼ばれて煮込み料理になっています。イギリスの北部、スコットランドでは伝統的な料理としてハギスがあります。羊の胃袋に心臓や肺などの内臓肉を詰めて煮込む料理です。胃袋を使う料理は、世界各地にあるようです。

 消化管は管状になっているので、中に詰め物をする発想がすぐに出てくるようです。一番ポピュラーなのはソーセージです。ソーセージはギリシャ神話にも出てくるほど、古くからある料理です。ひき肉を小腸に詰めて、燻製にします。

 使う腸の大きさで、名前がついていて、羊の腸を使うのがウィンナーソーセージ、豚の腸を使うのがフランクフルトソーセージ、ウシの腸を使うのがボローニャソーセージといいます。それぞれ都市の名前がついていて、そこの名産だったということに由来するそうです。

 腸の中で、羊の腸は他の動物に比べて、とりわけ長いことで有名です。全長は30m以上になります。こんなに長い腸を見ていたら、何かに利用しようと考えるのは自然なことです。ソーセージはその一例なのです。

 羊の腸は、他にもいろいろ利用されています。たとえば、バイオリンやギターの弦やテニスラケットの網を作るひもです。弦やひものことをガットというのは、ガットが腸を指す言葉だからなのです。

 消化管をとことん利用するのは、ものを無駄にしないという人類の知恵のような気がします。もっと積極的に消化管を食べるのは、いいことかもしれません。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


おとなの養生訓 一覧へ戻る

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 古垣建設
  • オノデラ
  • 日本仮設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (2,971)
おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,355)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,308)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,252)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (879)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。