お酒に入っているアルコールは、本来は体に必要がない不要物であり、有害な作用を示す物質でもあります。ですから、肝臓で分解処理し無害化して、主に尿によって体外に放出します。つまり、アルコールが抜けるかどうかは、肝臓のはたらきが重要だということです。
肝臓ではアルコール脱水酵素とアルデヒド脱水酵素という2種類の酵素がはたらいて、アルコールを無毒化しています。また、この2つの酵素によるアルコール処理が間に合わない時には、他の有害物質の解毒を担当するチトクロームP450系と呼ばれる酵素システムも動員されます。これらの酵素が作用するためには、ビタミンが必要です。
アルコール脱水酵素とアルデヒド脱水酵素の反応のためには、ビタミンB1が必要です。ビタミンB1は糖質からエネルギーを取り出すために必要なビタミンです。ですからビタミンB1が欠乏すると、全身がエネルギー不足となり、体に力が入らなくなって、いわゆる「脚気」という病気になります。
ビタミンB1はアルコールの処理にも使われ、消費されます。したがって、お酒を飲むときにビタミンB1の補給がないと、アルコールが処理されにくくなったり、糖質からエネルギーが取り出しにくくなったりする悪影響が考えられます。ビタミンB1は豚肉やうなぎ、ピーナツ、大豆などに豊富に含まれているので、おつまみを工夫することで解決できます。
一方、お酒を飲むとすぐ赤くなるタイプの人は、二つの脱水酵素が弱い人で、他にチトクロームP450系がはたらいて、アルコール処理を助けています。チトクロームP450系はビタミンCが必要です。ビタミンCはコラーゲンの合成に必要不可欠なもので、不足すると、最悪の場合、血管が破けやすくなり、全身で出血が頻発する壊血病となります。
アルコールを大量に摂取すると、チトクロームP450系が活発にはたらいて、その際にやはり大量のビタミンCが消費されることになります。ですから、とくにお酒に弱い人は、ビタミンB1に加えてビタミンCの補給に努めるべきです。ビタミンCはかんきつ類の他、ホウレンソウなどの野菜や、ジャガイモ、サツマイモに豊富に含まれています。おつまみとしてはポテトサラダがお勧めですよ。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)