おとなの養生訓

おとなの養生訓 第89回「砂肝」 鳥にとって歯の代わり

2016年04月22日 11時36分

 焼き鳥屋さんや焼肉屋さんに行くと、様々な肉がメニューに載っています。ロースやヒレなど肉の部位を示すおなじみのものから、レバー、ハツ、ホルモンなど内臓の部位を示すものまで。あらかじめ知識や経験がないと、戸惑うことの方が多かったりします。逆に、そういったものをサラリと要領よく注文して、盃を傾けている人に出会うと、その格好の良さに見とれてしまいます。酒場でも勉強が必要なんです。

 そんな、少し普通じゃないメニューとして、砂肝があります。串焼きにするとこりこりと適度な歯ごたえ、煮込みにしてもうまみのあるあれです。ところで、砂肝の正体はご存じでしょうか?

 砂肝のありかは食道と胃の間であり、前胃とも言われているので、胃の前の方が変化して袋状になったものと考えられます。しかし胃より壁は厚く、これが特有の歯ごたえにつながります。

 食道と胃の間にあるということは、消化器官の一部であるということです。砂肝の中には砂が入っているので、砂肝と呼ばれたり、関西ではスナズリと呼ばれたりするのです。この砂は食べ物を細かく砕くために必要で、これによって消化吸収を助けるのです。

 どうして砂肝が必要かというと、鳥には歯がないからです。鳥の口はくちばしになっていて、食べ物を食いちぎることはできますが、そのあとは丸呑みになってしまうからです。丸呑みした食べ物は砂肝に入り、時間をかけて粉砕され、本来の胃腸に送られているのです。

 つまり、砂肝は歯の代わりという訳です。なので、ニワトリを見ていると、たまに砂を呑み込むことがあるのですが、砂肝に砂を貯めるための行動なのです。

 こんな話を酒の肴に、焼き鳥屋のカウンターで飲んでいると、生理学を勉強していてよかった、なんて悦に入ってしまうのです。でも、お肉の正体なんて聞きたくない、という人も少なからずいるので、注意が必要です。私はとかくあれこれ説明しすぎるので、娘あたりには嫌われていますが…。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


おとなの養生訓 一覧へ戻る

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

北海道建設新聞社新卒・キャリア記者採用募集バナー
  • 川崎建設
  • オノデラ
  • 東宏

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

丸彦渡辺建設が31日付で清水建設の子会社に
2023年05月12日 (16,677)
上位50社、過去16年で最高額 22年度道内ゼネコ...
2023年05月11日 (8,418)
ラピダスの工場新築で関連企業から多数の問い合わせ
2023年05月25日 (6,552)
熊谷組JV、道新幹線トンネル工事で虚偽報告
2023年05月08日 (5,926)
砂川に複合型施設オープン シロの福永敬弘社長に聞く
2023年05月22日 (4,830)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓 new

おとなの養生訓
第255回「内臓脂肪蓄積」。ポッコリお腹は悪性肥満、生活習慣の改善が必要です。

連載 ごみの錬金術師

ごみの錬金術師
廃ガラス製品を新たな姿に。道総研エネ環地研の稲野さんの研究を紹介。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第30回「職業的背景で変わる視点」。経営には慎重かつ大胆なバランスの良い判断が必要となります。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第32回「確実に伝えたい色」。青と黄色は色覚に左右されにくい「伝える色」です。