おとなの養生訓

おとなの養生訓 第99回「秋と食欲」 冬に備え細胞が活性化

2016年11月02日 18時02分

 天高く馬肥ゆる秋、と申します。秋は収穫の時期であり、馬も食欲が増して大きくなるということです。人も食欲が増すようで、食欲の秋という言葉もあります。秋は農作物が実をつけて、収穫される時期であり、魚も冬に向けて脂がのってきます。おいしいものが一挙に出てくるので、自然と食欲が湧き、たくさん食べてしまうのでしょう。

 しかし、最近の研究では、それだけが理由でないことが指摘されています。一つは、冬に向かって、人の体内での代謝活動が活発化するということです。これは、甲状腺ホルモンという代謝を活発化させるホルモンが、冬に向かって分泌が増加するためです。夏よりもエネルギーを消費して、細胞を活性化して、冬の寒さに備えるためと説明されます。という訳で、エネルギーを得るために食欲が高まって、よりたくさん食べるようになると、考えられます。

 また、もう一つのしくみとして、秋から冬にかけて日照時間が短くなることが影響しているといわれます。とくに脳内で分泌されるセロトニンが関係しています。精神を安定させる作用があるセロトニンは、日照時間が短いと分泌が低下することが分かっており、冬季うつ病との関係が議論されています。

 そこで、セロトニンの分泌がなるべく減らないように人は行動すると考えられます。セロトニンの分泌は十分な睡眠により増加します。ですから、ぐっすり眠ると気分は爽快になります。一方、糖質、肉類、乳製品をより多く食べると、セロトニンの分泌が高まることもわかっています。ですから、秋に日が短くなり始めると、食欲が増して、セロトニンを増やす栄養分をとろうとするのだという説明です。

 という訳で、秋に食欲が高まるのは、気のせいでも、雰囲気に流されているのでもありません。したがって、メタボが気になるビジネスマンにとって、秋は要注意の季節であるといえます。とりわけ、注意すべきは酒宴での食事です。それは、適量のアルコールには食欲増進の作用があるからです。胃を刺激して胃液の分泌と胃の運動を活発にするからです。

 また、アルコールが抑制心を弱める作用があることも見逃せません。おいしいものを口にすると、もっと欲しくなるという訳です。帰りがけにラーメンを食べたくなるのは、それが理由の一つかもしれません。くれぐれもお気をつけて…。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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