昔、父方の親戚が集まると、必ず酒宴、そして叔父、叔母たちが次々と、持ち歌を披露していました。もちろん祖母も歌い、ついには歌がうまい弟が引っ張り出されます。それはそれは賑やかでした。ただ、父が歌うマイナー調の「赤とんぼ」だけには閉口していましたが…。そんな環境で育ったためか、酒席と音楽はつきものという考えが、私の根底にあります。
学生の頃に流行り出したカラオケにも、抵抗なく入り込んで、もう何十年も歌い続けている始末。宴会ではなく、一人で静かに飲んでいる時も、音楽は欠かせません。とくにウイスキーをチビチビやっているときには、ジャズが最高。この時だけはなぜかマイルス・デイビィスです。これを聴いていると、ウイスキーの味や香りが一段と深くなります。やはり音楽とお酒は深い関係があるのでしょう。
事実、お酒を飲む場所には、必ず音楽が流れていますね。バーやパブなど洋酒を提供するところだけでなく、居酒屋では演歌や民謡、小料理屋などは琴など和風の音楽、ビアホールではドイツ音楽、赤ちょうちんはラジオかな?
もちろんバンドの生演奏などが欠かせない音楽パブやキャバレーというのもありますね。音楽が流れていないところはほとんどありませんね。実際、本当に静かだと、なんか落ち着かない感じがするものです。
お酒と音楽の関係に目を付けた研究者が、お酒の味わいと音楽の関係について研究を行いました。静かな場所、音楽のみ流れている場所、音楽とテレビが同時に流れている場所で、色々なお酒を飲んで、その味わいを記録するというものです。
結果として、音楽のみ流れている場所は、その他と比べて、お酒の味が甘く感じるということが分かりました。イギリスでの研究ですので、甘く感じるということは、おいしいということを意味しています。
この辺は日本の表現と違うので注意が必要です。ただ、音楽やテレビなど色々な音が騒々しくしているのではなく、音楽のみが大事だという意味では、音楽とお酒の強い関係性を示す研究といえます。
ただ、もしそうだとすると、いい音楽がかかると酒量が増える危険性が高まります。これは気を付けなければなりません。最近、飲み過ぎなのは音楽のせい?いや、自制心の欠如です…。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)