おとなの養生訓

おとなの養生訓 第108回「アイコス」 ニコチン依存症は続く

2017年03月10日 18時26分

 最近、急速に広まっているタバコがあります。アイコスという名前で、パイプのようなものに短いタバコを差し込んで吸うものです。ただのタバコパイプかと思っていたのですが、大人気でパイプは品切れ状態が続いているとか。バーや居酒屋でもそこかしこで、このパイプをくわえている人が多くなりました。タバコを吸わない私も、気になっていろいろ調べてみることにしました。

 以前からある電子タバコはニコチンなどを配合した液を燃焼させた煙を吸うものでした。このアイコスは本当のタバコの葉を使います。しかし、パイプの方に工夫があって、タバコの葉を燃焼させず、加熱させて、ニコチンなどの成分を揮発させて、それを吸い込む方式です。つまり、タバコの葉を燃やさないのです。ここに通常のタバコと大きな違いがあります。

 一方、アイコスはたばこの葉を燃やさない程度に加熱することで、ニコチンや香りの成分は揮発しますが、燃えていないのでタールや一酸化炭素が発生しません。また、煙が出ないので副流煙も起きず、受動喫煙も防げるというのです。

 アイコスを吸うときに出るうっすらとした煙のようなものは水蒸気、すなわち湯気だそうです。こうしてみると、誠に結構なものであると思えます。少なくとも、私のような非喫煙者には受動喫煙が起こらないのですから大歓迎。タバコの煙で料理などが台無しになる可能性もなくなりますから、宴会でアイコスを吸われても不快になりません。

 ただ、喫煙者にとっては、依然としてニコチンの摂取が続くのですから、ニコチン依存症はそのままということになります。タールがないとはいえ、ニコチンの健康被害も少なからずあります。たとえば、ニコチンは血管を締めるので、血圧は高くなり、高血圧症に悪影響を与えます。粘膜の血流が悪くなるので、歯周病や胃潰瘍を悪化させます。ニコチン自体の発がん作用も否定できません。タバコをアイコスに切り替えるのは、決して禁煙したことにはならないと、わきまえるべきでしょう。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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