おとなの養生訓

おとなの養生訓 第115回「食べる量」 体格よりも習慣が影響

2017年06月23日 10時26分

 貝原益軒の養生訓の中に、「食事は腹八分目まで」というのが出てきます。江戸時代の頃から、人はとかく食べ過ぎるもので、食べ過ぎは単なる浪費だけでなく、健康を害するものであるという認識があったわけです。

 腹八分目は、つまり満腹にならない程度、という意味なのですが、では、満腹はどのくらいなのかというと、実は、個人、個人で大きく違っているのです。体格の差よりも習慣の差が大きく影響しています。

 満腹感は脳で感じるもので、胃の中が食べ物で満たされたという感覚なのです。胃は伸縮性に富んだ臓器で、例えば、常に満腹になるまで、食事をしていると、次第に胃が伸びやすく広がりやすくなります。そうすると、満腹感を得られる胃の容量が大きくなり次第に食べる量が増えてきます。

 そんな状況の下に腹八分目で食べても、昔よりは多い量を食べることになるので、腹八分目でも最悪、太ってしまうことになります。つまり、腹八分目という感覚で、食べる量を適切にコントロールすることはできないという訳です。

 では、食べる量をコントロールするにはどうすればよいのかというと、やはり「カロリー」という単位を用いるのがいいのです。食べ物に含まれる栄養素のうち糖質、脂質、タンパク質は三大栄養素と呼ばれ、量的にも、質的にも必要不可欠な栄養素です。三大栄養素の重要な性質に、いずれも体内においてエネルギー源として使用されるということで、さらに、脂質とタンパク質は必要に応じて糖質に変換されるということです。

 ですから、三大栄養素を一まとまりとみなすことができ、その総量は、体内で生じるエネルギー量で示すことができます。これが「カロリー」ということです。1日に使われるエネルギー量を補う分のエネルギー量を1日の食事でとれば、三大栄養素が体内で余って、溜まってしまうことが起こりません。つまり太らないのです。

 1日に使われるエネルギー量は所要エネルギー量と呼ばれ、体重と仕事などの1日の活動量から概算できます。30歳代の男性で1日2500kcalぐらいになります。ですから、食べる量は1日で2500kcalにできれば、少なくとも体重に変化は起きないことになります。胃が大きくなっていても大丈夫です。1日の食事量はホームページなどで簡単に計算できます。一度、計算してみてはどうでしょうか。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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