おとなの養生訓

おとなの養生訓 第126回「なぜ吐くのか」 空腹時の飲酒、胃を刺激

2017年12月22日 08時30分

 忘年会、新年会のシーズンです。この時期、飲み過ぎ、食べ過ぎで嘔吐することが起きやすくなります。嘔吐してしまうと、せっかくの気分も台無しです。しかし、病気でもないのに、どうして嘔吐を引き起こすのでしょうか。

 飲み過ぎ食べ過ぎによる嘔吐の原因は、胃の動きにあります。胃は食べ物を一時的にためて、腸に効率よく少しずつ送り出すのが役割です。なので、食べ物を受け入れるために、胃は広がります。

 もし、たくさんの食べ物が矢継ぎ早に入ってくると、腸へ送り込む前に食べ物がどんどんたまって、胃が大きく膨らみます。ついには胃が食べ物を抱えきれなくなり、それを一気に排除して元に戻ろうとします。この場合、腸に送っては処理しきれないので、逆流、つまり嘔吐が起こることになるのです。

 一方、胃の粘膜が過度に刺激されると、それにより内容物が有害であると判断されて、それを排除するために嘔吐になる場合もあります。いたんだ食べ物が入ると、胃は即座に反応して嘔吐を引き起こします。

 また、空腹でたくさんの飲酒をすると、アルコールが胃の粘膜を刺激するので、嘔吐が起こりやすくなるのです。さらに、アルコールは体内で代謝されてアセトアルデヒドに変わりますが、これが胃を刺激して嘔吐が起こりやすくなるとも言われます。アセトアルデヒドが増えると顔が赤くなりますので判断材料になります。

 忘年会の流れの中で考えてみます。1次会中に嘔吐が起きた場合、料理を食べ始める前に、一気にたくさんお酒を飲んだことが原因であると考えられます。アルコールが胃の粘膜を刺激したためで、とくに若い人たちの宴会で起こりがちです。

 1次会が終わって2次会に向かう途中、あるいは2次会中に嘔吐する場合は、酔った勢いで、1次会でたくさん食べ過ぎてしまい、胃が持ちきれなくなったためと考えられます。宴会慣れしていない女性に多く見られます。また、飲み過ぎでアセトアルデヒドが増えてしまった人は、真っ赤な顔して吐くことになります。

 3次会以降に嘔吐している場合は、2次会まではあまり食べずに、徐々にペースを上げて飲んだため、胃の動きが鈍くなり、そこに、締めの食べ物が急に入ってきて、胃がうまく広がれずに持ち切れなくなったためです。

 一口で食べ過ぎ飲み過ぎで吐くといっても様々な原因があります。嘔吐は飲酒事故につながりますので、しくみを理解して周囲が素早く対応することが必要です。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


おとなの養生訓 一覧へ戻る

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

北海道建設新聞社新卒・キャリア記者採用募集バナー
  • 北海道水替事業協同組合
  • 古垣建設
  • 東宏

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

丸彦渡辺建設が31日付で清水建設の子会社に
2023年05月12日 (17,083)
上位50社、過去16年で最高額 22年度道内ゼネコ...
2023年05月11日 (8,655)
ラピダスの工場新築で関連企業から多数の問い合わせ
2023年05月25日 (7,237)
砂川に複合型施設オープン シロの福永敬弘社長に聞く
2023年05月22日 (4,979)
熊谷組JV、道新幹線トンネル工事で虚偽報告
2023年05月08日 (4,160)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 行政書士 new
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第31回「特に需要が増える繁忙期」。情勢を把握して適切な宣伝を行うと、新規顧客獲得につながるかもしれません。

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第255回「内臓脂肪蓄積」。ポッコリお腹は悪性肥満、生活習慣の改善が必要です。

連載 ごみの錬金術師

ごみの錬金術師
廃ガラス製品を新たな姿に。道総研エネ環地研の稲野さんの研究を紹介。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第32回「確実に伝えたい色」。青と黄色は色覚に左右されにくい「伝える色」です。