忘年会、新年会のシーズンです。この時期、飲み過ぎ、食べ過ぎで嘔吐することが起きやすくなります。嘔吐してしまうと、せっかくの気分も台無しです。しかし、病気でもないのに、どうして嘔吐を引き起こすのでしょうか。
飲み過ぎ食べ過ぎによる嘔吐の原因は、胃の動きにあります。胃は食べ物を一時的にためて、腸に効率よく少しずつ送り出すのが役割です。なので、食べ物を受け入れるために、胃は広がります。
もし、たくさんの食べ物が矢継ぎ早に入ってくると、腸へ送り込む前に食べ物がどんどんたまって、胃が大きく膨らみます。ついには胃が食べ物を抱えきれなくなり、それを一気に排除して元に戻ろうとします。この場合、腸に送っては処理しきれないので、逆流、つまり嘔吐が起こることになるのです。
一方、胃の粘膜が過度に刺激されると、それにより内容物が有害であると判断されて、それを排除するために嘔吐になる場合もあります。いたんだ食べ物が入ると、胃は即座に反応して嘔吐を引き起こします。
また、空腹でたくさんの飲酒をすると、アルコールが胃の粘膜を刺激するので、嘔吐が起こりやすくなるのです。さらに、アルコールは体内で代謝されてアセトアルデヒドに変わりますが、これが胃を刺激して嘔吐が起こりやすくなるとも言われます。アセトアルデヒドが増えると顔が赤くなりますので判断材料になります。
忘年会の流れの中で考えてみます。1次会中に嘔吐が起きた場合、料理を食べ始める前に、一気にたくさんお酒を飲んだことが原因であると考えられます。アルコールが胃の粘膜を刺激したためで、とくに若い人たちの宴会で起こりがちです。
1次会が終わって2次会に向かう途中、あるいは2次会中に嘔吐する場合は、酔った勢いで、1次会でたくさん食べ過ぎてしまい、胃が持ちきれなくなったためと考えられます。宴会慣れしていない女性に多く見られます。また、飲み過ぎでアセトアルデヒドが増えてしまった人は、真っ赤な顔して吐くことになります。
3次会以降に嘔吐している場合は、2次会まではあまり食べずに、徐々にペースを上げて飲んだため、胃の動きが鈍くなり、そこに、締めの食べ物が急に入ってきて、胃がうまく広がれずに持ち切れなくなったためです。
一口で食べ過ぎ飲み過ぎで吐くといっても様々な原因があります。嘔吐は飲酒事故につながりますので、しくみを理解して周囲が素早く対応することが必要です。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)