北広島市 一貫性ある誘致活動
ボールパーク核にまちづくり計画
北広島市は、2016年12月の誘致表明時から「いい意味でスタンスが変わらない」と球団側から一貫した姿勢を評価されている。札幌市は候補地2カ所のうち球団側が興味を持った北大案に難色を示した一方、北広島市は最初から1カ所に絞り込み、安定して協議を重ねてきた。
道路の拡幅や新設、上下水道敷設、公園区域の粗造成のほか、無償の土地使用、税の免除と行政として可能な限りの提案を出し、きょう22日に14回目の実務者協議で1年間の協議内容をまとめる。
36・7haの真っさらな土地に、球団側が自由に描けるのが一番の強み。真駒内案に注目が集まる中「アジアナンバーワンのボールパーク(BP)という構想を実現する場所を提供できるのは北広島市」と川村裕樹企画財政部長は冷静に受け止める。
北広島市はBPを核としたまちづくりを掲げ、誘致を人口減少時代に定住人口を増やす〝究極の地方創生〟と捉える。まちのシンボルがあることで定住意識が生まれ、非日常と日常が交錯するエリアの魅力が人口増に結び付くという理屈だ。
経済規模を考えれば、BP整備は「札幌市を含めた道央圏全体に経済効果が広がる」と川村部長は見る。将来的には敷地内で完結せず、北広島駅前や北広島団地の定住の呼び水、大曲地区との回遊性につなげるなど拡張性や波及効果を展望。子育て支援など福祉施策の充実も見込む。
札幌市の場合、基盤が整った中でのロケットスタートが見込めるが、北広島市はディズニーランドのように徐々に新しいものを加えながら造り上げていくイメージだ。
きたひろしま総合運動公園の整備予定地だった敷地内のインフラは23年の開業に間に合わせる予定だが、新駅駅舎や国道274号へ抜ける4車線道路の新設は開業後となる可能性もある。
協議は最大の課題である新駅設置が前提条件に進む。球団側は場所の決定前にJR北海道が結論を出すことは厳しいとの理解から、新駅は必須としつつも、18年3月の候補地絞り込みまでに設置の可否が明確である必要はないことを示した。
新千歳空港から北広島駅までJRだと20分で移動できる。新駅があれば、野球だけではなく、北海道を体感できる環境や商業施設、宿泊施設がそろうBPには道内のファンだけではなく、観光客が流入する可能性がある。
球団側が方向性を示すのは来年3月。どちらを選んでも周辺を含む開発が見込まれ、真駒内地区の再開発や北広島市の定住促進施策との連携など、まちづくりに大きな影響をもたらす。
2案とも周辺開発へ大きな影響
2案の札幌都心からのアクセス性はほぼ同等になった。真駒内地区ではこれまでこだわってきた面積、北広島市は最大のハードルだった新駅開設が決め手から外れたようにも映る。ファンを喜ばせ、地域と共に新たなものを提案しようという球団の熱意を伝えるには、候補地を絞り込んだ今、あらためてそれぞれで描く未来像を示すべきではないか。
残留でさらなる活性化を目指す札幌市、地方創生に結び付け将来を描く北広島市。駆け引きが続く中、これまで球団を支えた土地に残るのか、新天地で理想を目指すのか。選択の時は迫っている。
(この連載は建設・行政部 山本浩之記者、本間愛理記者、経済産業部 武山勝宣記者が担当しました)