宇宙開発を6次産業化へ 道がセミナー

2017年12月27日 13時00分

約140人が参加し宇宙ビジネスの知識を深めた

 道内企業の宇宙ビジネスへの参入を後押ししようと道は21日、札幌市内でセミナーを開いた。北大公共政策大学院の鈴木一人教授は「北海道を宇宙のシリコンバレーに」と題して基調講演し、リモートセンシングの研究を進める高橋幸弘北大宇宙ミッションセンター長や、7月末に観測ロケットを打ち上げたインターステラテクノロジズ(本社・大樹)の稲川貴大CEOらが討論した。

 鈴木教授は、農業の6次産業化になぞり、打ち上げ施設整備などを1次産業、ロケット・衛星の開発と製造を2次産業、得られたデータの加工や利用を3次産業として宇宙開発の6次産業化を提唱。「実現の鍵は産業集積にある」と話し、データ利用と開発、打ち上げをワンセットで協調的に展開するため、「より身近に議論できるワイガヤ方式が重要」と主張した。人口密度が低く実験に適し、地元の支援があることなど本道の利点から、宇宙産業のシリコンバレーになる要素を秘めていると期待した。

 高橋センター長は、世界の衛星ビジネス市場の現状を解説。解像度を重視した分野で競争が激化する一方、詳細さを重視した分野は未発達であるため「北海道も頑張ればまだ食い込んでいける」と述べ、北大と東北大が進めるスペクトル・リモートセンシングの開発成果を報告した。

 現在は、北大を中心に疫病による農業不振の危機などを抱えるアジア圏の8カ国に参加を呼び掛け、衛星開発やデータ共有の仕組みづくりを目指している。「実現すれば今までと全く違う宇宙開発になる」と話し、「北海道の技術と環境を最大限に生かせば世界で戦っていける」と鼓舞した。

 稲川CEOが取り上げた世界の超小型衛星の需要市場調査によると、2020年以降は年間400機に達する。約40年間で百数十機という日本の打ち上げ数と比べ、「非常に驚くべき数字。完全に世界が変わってきている」と市場の急速な成長を分析。2度目の観測ロケット打ち上げに向けて準備を進めている現状も示し、「ロケット開発が難しいのは当たり前。実験を繰り返せる北海道の環境がとにかく大事」と強調した。

 道内宇宙ビジネスの可能性をテーマにしたパネル討論では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の松浦直人新事業促進部長と道の青木誠雄科学技術振興室長も参加した。

 青木室長は道の取り組みについて、「これまでは射場を整備し、ロケットを打ち上げるという視点しかなかったが、利活用という部分をこれからどう伸ばしていくかが重要になる」と話し、道内ICT企業に対する情報提供やデータの利用研究を強化することで、新たなビジネスづくりにつなげる考えを示した。


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