積丹半島のウニ、ナマコを世界へ―。近年、漁獲量の減少で疲弊にあえぐ道内日本海側の漁場に輝きを取り戻すべく、神恵内村が近隣の岩内町、泊村とチームを組み、地方創生事業に乗り出した。販路や輸出の拡大、加工商品開発など6次産業化の計画を推し進める商社、キットブルーを昨年10月に設立。持続可能な漁業、水産業を地元に構築し、地域活性化に挑む。(小樽支社・高橋 秀一朗記者)
かつてはニシン漁で栄華を極めた神恵内村。海岸には鰊御殿が立ち並び、遊郭までもが存在したという話から、当時いかに繁栄していたかがうかがえる。
しかし、道がまとめた2017年1月1日時点の住民基本台帳人口によると、同村は後志管内で唯一人口1000人を切っており、村が集計した17年8月末のデータでは896人という状況。
この衰退の要因について、高橋昌幸村長は「神恵内は水産業で生きている村だが、近年の温暖化でホッケやサケなど回遊魚の動きが変わり、漁獲量が減少している」と指摘。日本海側漁師の所得は、オホーツク側に比べ20―30%ほどに落ち込んでいると肩を落とす。
こうした背景を踏まえ、高橋村長は漁師や神恵内の浜に還元できる事業の実施を決意。近隣の岩内町、泊村と連携して地域再生計画「とる漁業から育て・稼ぐ漁業への転換による持続可能な地域産業の創出・所得増大計画」を策定し、昨年8月30日付で国の認定を得た。
計画には、通常8月で漁期を終えるウニについて、実入りの悪いものを養殖して出荷できる状態まで育てて販売する事業などを盛り込んだ。
中でも注目すべきは商社の設立。社名をキットブルーとして昨年10月に設立した同社は、神恵内村の池田幸雄副村長を社長に据える。取締役には猪口仁岩内副町長、牧野浩臣泊村長が着任。現在は沿海調査エンジニアリング(本社・札幌)から2人が出向し、社員として業務に当たっている。
同社は漁業者の所得向上や後継者問題の解決を目的として、地方の漁協や水産業者と連携し、商品開発や販路拡大、情報発信などに取り組む。
設立したての同社だが、村の担当者によれば「既に乾燥ナマコなどのサンプル商品をニセコや札幌、東京の飲食店やホテルに提供し、反応を見ている」状況だという。
特に道内産のナマコは健康食品として中国で人気が高く、全国的に見ても高値で取引されていることから、商品開発と併せてこの販路拡大に力を注ぎ、今後は道内外や海外との商談も進めていく。
高橋村長は「将来的には、この商社を民間に譲渡したい。例えば、漁師夫婦の夫が漁に出て、その収穫物を地元加工工場で働く妻が商品化する―。このような形で世帯の収入が増えれば」と展望する。
近隣地域で海産物、ウニといえば積丹町産のイメージが広まっているが、神恵内村産の認知度も高めなくては―。知名度向上で地域の持続的社会形成を目指す同村の取り組みが本格化するのは、これからだ。
「地方創生」という掛け声が必要なほど、地方は疲弊している。全国的な少子高齢化の進行に加え、人口流出で地場産業の担い手不足に苦しむ地域も少なくない。そんな中でも、地域が持つ資源に活路を見いだし、それを磨き上げて活性化につなげようとする道央、道南各地の取り組みを、不定期で紹介する。