ことし4月施行の宅地建物取引業法(宅建業法)一部改正で、不動産業者は中古住宅を売買する際、インスペクション(住宅診断)制度をユーザーに説明しなければならなくなる。そんな中、さくら事務所ホームインスペクション北海道(札幌)は25日、日本ホームインスペクターズ協会(本部・東京)の長嶋修理事長を招き、今後の不動産市場を考えるセミナーを札幌で開いた。今後の急激な人口減少から、中古住宅市場は現状より5倍ほどに拡大。築年数一辺倒だった物件評価の考え方も変わり、住宅診断士の役割はさらに重要になると訴えた。
長嶋理事長は「現状の不動産市場はバブルではない」と指摘。「REITやファンドなど、お金の入る容量が過去よりも増えたので、バブルのように見える」と話す。
新築マンションの販売鈍化には「都心の高額物件ばかりが増え、郊外など低額物件の数は絞られたので、販売戸数は少なく、平均価格のみ上がっているように見える」と説明。大手デベロッパーを中心に、完成前の完売を目指す〝青田売り〟の慣習を見直そうという動きも影響しているという。
「新築マンションの価格は今後頭打ち」と長嶋理事長。東京23区は平均価格6000万円超にあり、中古物件のリノベーションを考える人が拡大。「しばらくは中古の時代が続く」とみている。
急激な人口減から、業界では現状50万―55万戸の中古住宅が今後200万―250万戸に増えるといわれている。だが「状態や立地など、全てが流通できるわけではない」と補足する。
「今の中古住宅市場はレモン市場。ちゃんとしたレモンもあれば腐ったレモンもあり、購入者がどれも疑ってしまって買えない状況。その解消の一環がインスペクション」と示す。
インスペクションは住宅診断士が第三者的立場から、住宅の劣化状況や欠陥の有無、おおよその改修費用などをアドバイスする専門業務。アメリカやイギリスでは既に浸透しており、日本でも4月から不動産業者によるユーザーへの制度説明が義務付けられる。
国土交通省は物件に関わる取引履歴や管理状況、都市計画、学区などの情報を包括的に把握できる「不動産総合データベース」を整備中にある。長嶋理事長は、普及すると「重要事項説明書にかかっていた時間を軽減でき、宅建業の働き方は劇的に変わる」という。
「将来的には築年数を問わず、コンディションやメンテナンス状況から建物を評価する動きになる」と長嶋理事長。「価値が落ちにくい状況をつくっておけば、リバースモーゲージ(高齢者向けの自宅を担保にした融資制度)も使える。インスペクションは、そうした時代を見据えた制度。しっかり機能すれば今後の不動産業界は明るい」と訴えていた。