「薪(まき)ストーブのある家づくり」を進める提案型住宅の北清建設(本社・恵庭)は、地域の自然と人とつなげる社有林「北清の森」を育てている。ストーブに必要な薪を得るために購入した森が、薪を割る施主や自然を学ぶ地元の園児たちのにぎわいの場に変わった。薪ストーブをきっかけに、家づくりから地元の里山づくりへを展開している。
薪ストーブの家づくりは、2002年に社長に就いた相沢裕二さんの提案。元は自宅に設置した薪ストーブが訪れた客から好評だったため、薪ストーブのある家づくりを始めた。
オール電化やセントラルヒーティングが当たり前になった近年、本物の炎で暖を取る習慣は少なくなった。相沢さんは、「身体の芯まで届く、遠赤のやわらかな暖かさが魅力。手間暇さえ楽しさに変える」と語る。
薪ストーブは薪がなくては始まらない。当初は廃材を薪として販売していたが、施工数が増え、需要が増えると生産が追い付かない。薪の確保のため、11年に購入した恵庭市島松沢の約3・2haの原生林は会社名を取って「北清の森」と名付けた。
「北清の森」地元の里山に
「場所を提供しただけなのに、自然と楽しさが広がっていった」。最初に北清の森に目を付けたのは、薪ストーブを取り入れている地元の恵庭幼稚園。木育の場としての活用を目指して、山の整備が始まった。
活動は、園児の父母へと広がり、森の事務所やトイレ、ツリーハウスなど子どもたちの遊び場を手作りするようになった。森づくりの有識者や地域住民らも加わり、森林ボランティア団体「恵庭ふるさと100年の森」が結成された。
森では、同社で薪ストーブのある住宅を建てた施主らによる有志団体「薪割りの会」も活動している。夏や秋の間に自ら薪を割って、その冬に使う分を確保したり、森を流れる小川で釣りやキャンプなどのアウトドアを楽しみに訪れているという。
〝馬搬〟文化伝承にも
冬にはばん馬を迎え、伐採した木材を馬で運び出す昔ながらの〝馬搬〟の文化を子どもたちに伝えるなど、地域を巻き込んだ取り組みが評価され、17年度のウッドデザイン賞では、ハートフルデザイン部門で林野庁長官賞(優秀賞)に選ばれた。
昨年1月には、林野庁から青年林業士の認定を受けた相沢さん。「家づくりを始めた頃とは、予想もしていなかった形になった」と振り返り、「子どもたちが大きくなって自分たちの植えた木を気にしたり、森の保全を続けることで、将来は地域の里山になっていけたら」と話している。