■町と企業、高校が連携
知内町林業担い手確保推進協議会は2016年5月の設立以来、冬季を除けばほぼ月1回以上の活動を繰り広げた。密度の濃い2年間だった。
しかし、最初から順調だった訳ではない。事務局を務め、協議会をけん引した渡島総合局東部森林室の二本柳寿紀主査は「最初は会員企業や高校側も戸惑っているように感じた」と振り返る。例えば、休日の数時間、実際に山へ入って林業を体感してもらおうと考え、知内高の生徒を対象に現場見学会を企画したが、応募者はゼロだった。
二本柳主査は「林業が知られていない現実を目の当たりにした」という。「誰か来るだろうと安易に考えていた」が、生徒だけでなく教師も林業になじみが薄い普通科高校では「林業自体を知ってもらうことがまず必要だった」と話す。
■努力重ね活動に広がり
そこで協議会として町森林組合のインターンシップ参入を高校に要請。来てくれた生徒2人には林業の全体知識を伝えた後、森林組合の仕事を説明した。生徒は「徐々に林業のことが分かり、楽しい仕事だと思えた」と話し、講師を務めた森林組合の桜井大介参事は「戸惑いながらも、研修を進める中で少しずつ手応えを感じた」と自信を持った様子。その後は、会員の積極的な提案で長期就業体験が実現するなど、活動はますます広がりを見せた。
一方、町では大野幸孝町長が「自分のこだわり。第1号でやりたかった」と話す全国初のカラマツCLTを活用した研修・宿泊施設「しりうち地域産業担い手センター」が建設中。地域産業の担い手を受け入れる拠点として、体験や研修メニューを整備し、町内での就業や定住を支援する。
知内高は、協議会の活発な活動を受けて、林業や農業などから関係者を講師に招く少人数対話型の職業講話「ソクラテスミーティング」を初めて実施した。
産業の維持と発展を下支えする町、世代交代や技術継承を進めたい企業、生徒の職業観育成や地元就職希望者の受け皿を確保したい高校。こうした町内の各関係者が連携し、それぞれができることから取り組んだ2年間だった。