色彩を使った商品開発と研修プログラムを手掛ける札幌市内の北海道カラーデザイン研究室は、商品や建物の内外装に色彩の効果を取り入れた提案に取り組んでいる。代表を務めるカラーコーディネーターの外崎由香さんは「生まれ育った北海道の良さを色で表現したい」との思いから、札幌の景観色を活用した商品づくりを通じ、色を生かしたまちづくりを目指している。
外崎さんが色に興味を持ったきっかけは「交通事故に遭ってリハビリがてらに描き始めた絵」だった。励ますような色の明るさに触発され、心身ともに活力を取り戻せた経験から、色の効果を実感し、専門的に学び始めた。
「色といえば占いのようなものと捉えられがちだが、心に対する機能的側面がある」と話し、「色彩をより実践的な形で生かしたい」との思いから2015年に同研究室を立ち上げた。
専門学校や大学での講義、企業での研修、16年に設立した色彩療法士の資格事業を通じて、色彩効果の周知を図る一方で、モデルルームや店舗、一般住宅の内外装への色彩の提案にも取り組む。
外崎さんは、色彩の効果が重要な施設として、病院・福祉施設を挙げている。清潔さを感じさせる白い壁紙は、反射が強く、緊張を高めやすい。また、各部屋や階を同じ色に統一してしまうと、認知症の患者の混乱にもつながる。落ち着く配色や建物の意匠を損なわない色分けを取り入れることで、施設利用者の不安を軽減できるという。
色彩を生かした商品開発では、畳販売のソナタ(本社・北見)と共同で、従来のイ草色からピンクや白といったカラフルな畳を考案。アイヌ文化の模様やタンチョウの色合いなど北海道の文化を色で表現した「北海道カラー折り紙」などを考え、外国人観光客向けのお土産として5日から始まったさっぽろ雪まつり会場で販売している。
商品や建物への提案を経て、活動の幅はまちの景観へと広がっている。「景観色をもっと外装に使えば、都会の無機質な空間を札幌らしいまち並みにできる」と考え、札幌市が作った景観70色を生かし、色合わせゲームなどができる景観カード「SAPPOLOR(さぽら)」を販売。現在は道内各地の教育機関で景観学習の教材として使われている。「まちの色は1日、2日では完成しないので、次の世代を担う子どもに学んでほしい」と期待する。
企業の看板や公共物で統一が難しいまち並みも、「その町独自の色を決めることで景観をつくることができるのでは」と考えており、25日に開かれる中標津町の景観まちづくりフォーラムなどを通じて、景観色を意識したまちづくりを道内に展開していきたい考えだ。