激増する外国人旅行者
大きなキャリーバックを手にする訪日外国人でにぎわう新千歳空港。空間や機能の拡充を続け、今やさまざまな国の飛行機が飛び交う拠点空港に成長を遂げた。2020年度には空港の民間委託が予定され、新規就航や施設の開発が期待される一方、混み合い始めた空港直結のJR駅や、便数増に伴う周辺住民の防音対策という課題もある。本道を代表する空港として、どのような役割を果たしていくのか、その動向を追った。
■受け入れ体制充実へ再整備本格化
滑走路を飛び交う旅客機のエンジン音を背に、国際線ターミナルビルの再整備が本格的に始まった。完成すれば現在の2倍、延べ約12万4000m²に拡大。CIQ(税関・出入国管理・検疫)増設のほか、免税店をはじめ商業施設や富裕層向けホテルなども新たに備わる。狭あい化の解消だけでなく、国内線ターミナルビルと並び滞在型施設に変貌する。
国土交通省によると、新千歳空港の17年国際線旅客数は約329万人となり、過去最高を更新。韓国などアジア系の格安航空会社(LCC)の新規就航や増便が要因だ。空港ビルの運営管理をする北海道空港子会社の新千歳空港ターミナルビルディング(本社・千歳)の担当者は、再整備が完了すれば「これまでの倍となる500万人にも対応できる」と説明。外国人旅行者の増加に万全な体制を取る。
■2次交通に課題
「空港ビルの受け入れ体制を整えるのはいいが、交通機関は対応できるのか」。空港利用者が増加傾向にある一方、経済団体が2次交通への課題を指摘する。旅客の約5割、年間1000万人以上が空港直結のJR新千歳空港駅を利用しており、今後も観光客が増えれば駅ホームや客車混雑の激化が予想される。
JR北海道は、快速エアポートの増発を検討するなど対応を急ぐ。昨年、増発に必要な4編成24両の発注を済ませた。札幌駅発着列車の折り返し時間を短縮するため、JR札幌駅を起点に桑園、苗穂両方面に本線から外れる引き上げ線を設置するなど、地上設備の改修も視野に入れる。
ただ、地上部の整備は北海道新幹線の札幌駅ホーム位置が決まらない限り、作業工程が進まない現状にある。「現駅案」や創成川をまたぐ「修正東案」のいずれかによって、工事内容が変わるからだ。同社は「20年の東京オリンピック開催時に増発できるよう準備を進めていく」との目標を立て、空港整備とも連動した2次交通の改善に向け、3月中の結論を待つ。
■千歳駅前が活況
空港の発展は千歳市の市街地にも変化をもたらす。JR千歳駅前では外国人観光客の宿泊需要に応えようとホテルの新築や増築が相次ぐ。不動産業のアルファコート(本社・札幌)は、一気に2棟のホテル新築を決めた。適地を取得する競争も出始め、地価上昇にも影響を及ぼしている。
市内へのインバウンド宿泊者数は、17年度上半期で前年比41.1%増の7万1341人と増加傾向にある。市企画部の千葉英二部長は「宿泊者の受け入れが進めば、飲食店の利用を含め経済効果が生まれる」と期待を寄せる。
「賃貸がどんどん建っている」(地元不動産関係者)とアパートや寮の建設も目立ってきた。現在、新千歳空港ビルで働く人は約7600人だが、国際線ターミナルビルが完成すれば、さらに人手が必要となり住宅需要が増すと予想される。
道内各地で過疎化が進む中、新千歳空港の勢いは、千歳市の経済にも大きな波及効果をもたらしている。