ロシア第3の都市・ノボシビルスク。シベリア管区の経済拠点となる同市で日本企業の新たな市場を求める動きが始まっている。同市で2月に開かれたシベリア最大の展示会に道内企業が出展した。札幌市から約4000㌔離れた寒冷地で、道内企業に商機はあるのか。現地で奮闘する5社の様子を取材した。(経済産業部・武内紫衣奈記者)
■経済拠点ノボシビルスクへ
姉妹都市である札幌からウラジオストクを経由すること約9時間。ロシアのど真ん中にあるノボシビルスク市にたどり着いた。2月中旬の現地は午前9時でマイナス14度。1月の平均気温はマイナス19度、降雪量は約1m。街を歩けば厚さ十数cmの圧雪した雪道や歩道脇の雪山と、見覚えのある景色が続く。
シベリア鉄道最大ターミナルのノボシビルスク駅
首都モスクワ、ヨーロッパの玄関口サンクトペテルブルクに次ぐ、人口約160万人が暮らす同市。面積は約502平方㌔と札幌市の半分ほど。東西を結ぶシベリア鉄道の貨物輸送、南北を結ぶオビ川の河川輸送、ヨーロッパとアジアの中継基地となる国際空港を備え、ロシアの物流拠点として大きな役割を担う。第2次世界大戦後は航空産業や工業の都市として栄えたが、現在は科学・IT技術の先進地でもあり、国内屈指の研究施設を抱える。
従来は地理的に日本からも近いウラジオストクやサハリンなどいわゆる極東地域に限られていた本道とロシアの経済交流だが、昨年2月にノボシビルスク市で開かれたシベリア最大の建設展示会「SibBuild(シブビルド)」に道内企業3社がブースを構えたことで、内陸シベリアに新市場としての本格的なスポットが当たった。
■耐寒ゴム手袋の青井商店など
新天地に乗り出したのは、耐寒ゴム手袋の青井商店(本社・旭川)と金属製外壁材のネオトレーディング(同・札幌)、電気融雪マットの北海道ゴム工業所(同・由仁)で、いずれも既に極東地域で市場を開拓している。
シベリア地域だけでなく、例年国内外から約180社近くが出展し、4日間で延べ7000人以上が訪れる同展示会。事前告知のない昨年の出展だったが、ネオトレーディングの阿部武士社長は「まず現地で反応を見ることを目的に出展したが、朝からずっと多くの人だかりに囲まれた」と振り返った。閉会後も主催者側には3社の商品をどこで購入できるか問い合わせが相次いだという。
初参加で得た大きな反響に手応えを感じ、ことしの展示会ではさらに旭川機械工業(同・旭川)と、アメリカや東南アジア諸国など海外展開に力を入れる日東建設(同・雄武)が加わった。
移民を中心に今後も増加する同市の人口は、数年内にも250万人に達すると予想されている。同市を州都とするノボシビルスク州の2016年の住宅供給面積は約153万m²。1州で極東全8地域の合計供給面積に相当し、潜在市場は計り知れない。
海外投資関連企業であるノボシビルスク州投資発展エージェンシーのラーダ・ユロチェンコ投資誘致部長は「住宅面積が驚くほど大きいのにインフラ整備はまだ。市の予算がとにかく足りない」と現状に危機感を示す。「技術が遅れていては、建設拡大の意味がないと分かっている。日本の先進技術と共同で、安くて質の高い材料を使うことができれば大きな解決になる」と共同研究にも期待を寄せている。
郊外で進む建設工事