流木を川で再循環、高校生が挑む―。2016年夏の台風災害などで大量発生した流木の処理について、帯広工高の生徒が木を河原で腐朽させ河川に再循環する研究に取り組んでいる。研究は日本で初の試みとなる。管理する帯広開建帯広河川事務所や帯広畜産大など専門家の支援を受けながら、将来の実用化に向けて調査を進めている。
流木の再利用は、チップ化やおがくず、バイオマス資源への転用が一般的となっている。ただ流木の輸送や破砕処理のコストは高く、特に十勝川流域に残存する約1万㌧の流木を運搬すると3000万円ほどかかるとされる。その半面、近年は大雨が多発し、発生量は増加傾向にある。
同校環境土木科は、13年度から十勝川中流部市民協働会議(柳川久代表)と連携し、河川敷の草地復元や防災授業に取り組んでいる。
17年に3年生だった藤島雄一さん、鈴木龍司さん、曽我部美優さんは活動を通して管内で大量に漂着した流木の処理問題に関心を持ち、何かできないかと模索してきた。同会議の事務局を務めるアークコーポレーション(本社・帯広)の助言を受け、時間経過によって流木が朽ち果て土壌に還元される腐朽について調査を始めた。
17年7月から札内川にある光南地区水辺の楽校で調査を開始。河川敷に漂着したドロヤナギの流木と伐採木を比較検証した。腐朽は木材腐朽菌の分泌する酵素によって木の成分が分解して生じる。3人はそれぞれの木を堆積した流木の上や土中に埋め、木の強度や含水量のデータを11月まで月1回のペースで採取した。
ことし3月17日に開催した第12回十勝川中流部川づくり報告会で、これまでの調査結果を発表した。腐朽は1年で進まなかったものの、寒冷地である北海道の場合は木材の腐朽に関わる微生物だけでなく、雪解け時期の凍結融解作用の影響があると考察した。積雪後の流木の観察は18年度以降も3人の後輩が引き継いでいく。
指導する同校の岡本博教諭は「流木の漂着した場所で速やかに腐朽し土と一体化すれば、輸送や処理のコストは大幅に減る。調査を進めていき、処理に携わる人へノウハウを提供できるようにしていきたい」と生徒たちの頑張りに期待している。
冬に入って中断していた調査は、融雪の状況を見て5月にも再開する予定。雪と厳しい寒さにさらした流木の状態や質量、密度の変化にも注目し、データを集めていく。