よくシニアの方が、「最近、お酒に弱くなった」「二日酔いになりやすくなった」「1次会で切り上げるようになった」と嘆いているのを耳にします。かく言う私も、立派な?アラカンで、昔に比べれば酔いが早く回ることを実感しています。年を取るとお酒が弱くなるのは明らかなのですが、それはなぜなのでしょうか?
体内でアルコールを処理して無毒化するのは肝臓の役割です。肝臓にはアルコールを分解処理する2種類の酵素があり、これの作用で体内のアルコールはなくなります。この作用のためには、体中のアルコールを肝臓に運ぶ必要があります。これを行っているのが血液の流れ、血流です。血液が肝臓に順調に流れ込んで、はじめてアルコールの分解は進むのです。
一方、肝臓は年を重ねるごとに、次第に老化します。それは血管の老化に伴って、肝臓に流れ込む血流が減少するためと考えられます。そのため、飲酒によって体に入ったアルコールが肝臓に運ばれる量は減ることになります。とすれば、アルコールの分解処理は遅くなるということになるわけです。
肝臓に流れる血流が減ると、肝臓の細胞も減ってくるといわれています。もしそうなら、細胞が持っているアルコールの分解処理をする酵素も減るわけですから、これもアルコール処理が遅くなる要因となります。肝臓に流れ込む血流が減ると、二重の意味でアルコールは体に残りやすくなるのです。
年を取るとお酒に弱くなるのは真実です。では、どう対処したらいいのでしょうか?もちろん、一番の対策は酒量を減らすことです。肝臓のはたらきは40歳代以降に低下するようなので、30歳代の酒量を目安として、その2、3割ぐらい減らす必要がありそうです。60歳代以降は5割まで減らすべきという専門家もいます。
もう一つの方法は、肝臓の血流を減らさないようにすることです。これには、水分の補給が必要です。普段から水分補給を心がけ、飲酒中もお酒とは別に給水するのです。お酒は決して水分ではありません。もちろん、飲酒が終わった後にも水分補給をしましょう。あとは、体の血流を促進するため、楽しく語らい、おおいに笑うべきです。カラオケで声を出すのもいいでしょう。タバコは血流を減らすので、控えるのがいいでしょう。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)