函館駅周辺ホテル林立 新築や増設で2000室

2018年04月27日 08時00分

 函館市内のJR函館駅周辺で、ホテル建設が相次いでいる。300室前後のホテルが4カ所で建設中のほか、今秋にはJRインなどが2カ所で着工する。デパート棒二森屋跡地ではホテルを含む複合施設構想も浮上し、これらを含めると2000室近く増えることが予想される。北海道新幹線の開業とともに、アジア圏インバウンドの旅行ブームが相まって観光地として輝きを増す函館で、ホテル投資が収まる気配がない。(函館支社 菊地 康太記者)

■投資過熱

 函館駅前・大門地区は、中心市街地活性化基本計画(2013―17年度)に基づく再開発で、街の雰囲気が大きく変貌した。JR函館駅前の和光ビル跡地には複合商業施設「キラリス函館」が誕生。電停がリニューアルされ、アーケードを撤去した駅前通では電線類の地中化が進む。

 16年度の市への観光入り込み客数は561万人と過去最高を記録。特に新幹線で乗り入れた東北や北関東からの来訪が増えたという。17年度上期は若干落ち込んだが、開業年とほぼ並ぶ宿泊客数を確保し、外国人宿泊者数は過去最高を更新し続けている。

 そんな背景もあり、駅周辺では判明分だけで6つのホテル新築が計画中。新規参入に対抗すべく、地元既存ホテルの改装・増設も複数あり、函館国際ホテルでは13階建ての新棟が9月にもオープンする。開業後は135室増え、435室と市内最大規模となる。

 札幌国際観光(札幌)は、その並びで函館センチュリーマリーナホテルを新設している。15年から函館進出を模索してきた桶川昌幸社長は「絶景の屋上露天風呂を楽しめる都市型のリゾートホテルにする」と意気込み、こだわりの朝食サービスで差別化を狙う。

 駅前で大和ハウス工業(大阪)が手掛けるロイヤルパークスER函館駅前は、ホテルと店舗による複合商業施設が注目を集めている。13年ごろ、新幹線開業を見据えて地元洋菓子店が製菓工場などを計画したが、白紙となり、事業者を再公募した場所だ。

 「函館を訪れる方々が必ず立ち寄る場所に」との思いを抱く堀福次郎取締役専務執行役員。ホテルはグループでの宿泊をメインとし、3室のサービスアパートメントを設けて長期滞在にも対応させる。稼働率は80%で年間13万人の計画だが「限りなく90%近くまでいくのでは」と勝算を持つ。

 一方、繁華街の大門ではユニゾホテル(東京)が仮称・ユニゾインエクスプレス函館、WBFリゾート(札幌)が仮称・函館駅前WBF HOTELをそれぞれ新設中。ユニゾホテルは機能性と低価格を両立させ、WBFリゾートは天然温泉の大浴場を売りにする。

■今秋、2カ所で着工

 今秋からはJR北海道(札幌)のJRイン函館、中和石油(札幌)の仮称・函館大手町ホテルがそれぞれ着工する。中和石油の杉沢謙次郎社長は、隣り合う函館朝市との連携を強調し、若松地区で進む大型クルーズ船対応岸壁整備にも期待感を示す。

 大手スーパー、イオンが地元関係者に提示した棒二森屋の跡地活用も今後の再開発を左右しそうだ。閉店・解体後にホテルや商業施設、マンションなどで構成する複合施設を建設する構想。この動きを見て、市は駅前通に交わる広場のはこだてグリーンプラザの再整備に取り掛かる。

 ホテルの建設ラッシュに対し、函館ホテル旅館協同組合の遠藤浩司理事長は「競争は激しくなるが、お客さまにとっては選択肢が増えていい。街の雰囲気も明るくなる」と話す。「立地やサービスなどホテルによって色がある。戦略を持って取り組むべき」と見据える。

 さまざまなタイプの宿泊施設が増えることで函館国際観光コンベンション協会の渡辺兼一会長も「学生のスポーツ大会から医学会など幅広く展開できる」と期待する。その一方、価格のダンピング、観光業界全体を取り巻く労働者の確保に懸念を抱いている。

 駅周辺のみならず、温泉街の湯の川地区でも、渚亭や湯元啄木亭、イマジンホテル&リゾート函館、万惣などが増改修を実施した。花びしホテルや湯の川観光ホテル祥苑、湯の浜ホテルでは耐震改修を予定する。さらにルートイングループがグランヴィリオホテル函館(250室)を新設する計画が浮上している。

 観光都市として新たな転換機を迎えて、宿泊施設への投資が活況に沸く。道南観光の拠点として多様化するニーズに応えるべく施設の充実が、今後も続くとみられる。


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