最近、ジンが流行り出しています。ジンといえば、ジントニック、ジンライムなど、おなじみのカクテルに入っているお酒というのが、一般的な認識です。しかし、最近、日本のメーカーで、ジンに個性的な香り付けをしたものが発売されるようになりました。実は、札幌にもそんなメーカーが誕生しています。それで、ジンはカクテルでなくてもうまいと、気づかれた方も多いのではないでしょうか。
そもそも、ジンってどんなお酒でしょうか?先日、知人にジンの材料を聞かれて、一瞬、返答に困ったことがありました。大麦、ライムギ、ジャガイモなどから発酵し、蒸留してとられた純度の高いアルコール、つまりスピリッツが原材料だからです。まあ、蒸留したアルコールなら、どんな材料でもいいので、返答に窮したのです。
じゃあ、ただのスピリッツ、という訳でもなく、ジンという名前がつくためには、ジュニパーベリーという植物の実と一緒に蒸留を繰り返して香り付けされなければなりません。名産地はロンドン。イングランド(スコットランドではない)を代表するお酒といえばジンなのです。
ジンは、オランダの名門であるライデン大学医学部の教授が解熱利尿の薬用酒として使ったものが起源といわれています。つまり、薬だったのです。アルコールの発汗作用や利尿作用を目的としていた、と、今では解説できますが、正直、本当に効いていたのか、怪しいところです。
でも、うまいお酒であったので、本来の目的とは別に広まっていったのだそうです。おいしくて体にもいい、と一挙両得を狙ったのでしょうか。酔いながらも健康でいたいと思う、人間のサガを感じます…。
ジンがカクテルベースとして広まったのは、その個性の少なさに関係があります。ジュニパーベリーの香りはほんのりとしていますし、軽い苦味も邪魔なものではありません。そこで、他のリキュールなどとも相性がいいのでしょう。
私は、お酒を教えてくれた先輩方の言いつけを守って、ジンはマティーニとして飲むのが一番と思っています。また、初見のバーでは、手始めにジントニックを頼むと良いとされています。飲みやすいし、どのジンを選ぶのかによって、バーテンダーの趣味、趣向が分かるとか言われます。
シンプル・イズ・ベスト、とはジンのための言葉かな。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)