札幌市中心部でホテル新設の動きが相次いでいる。薄野や札幌駅前を中心に11カ所で建設中。さらに大手カタログ通販のベルーナ(本社・埼玉県上尾市)のグループ会社カリフォルニアなどが2カ所で計画し、年内の着工を控える。福岡地所や西日本鉄道、JR東日本といった道外大手の参入もあり、訪日外国人需要を見込んだホテル投資が熱を帯びている。
「インバウンドやビジネス需要が旺盛な札幌駅前でチャレンジできる。ホテル業界に新たなインパクトを残したい」。福岡地所の榎本一郎社長は9日、ホテルFORZA(フォルツァ)札幌駅前の地鎮祭で、道内1号店目の誕生に期待を込めた。
当初は客室数180室で計画していたが、近年の外国人観光客増加を背景に、さらに高い稼働率が見込めると判断。敷地を買い増しして、施設規模を延べ約1万1300m²、客室数304室に変更した。
JR東日本は、同社エリア外で初となるホテル事業展開の場として札幌を選んだ。建設中の学校法人高宮学園のビルに入居し、JR東日本のホテルブランド「ホテルメッツ」を運営する。
2018年に入り、札幌中心部での大型ホテルの着工は6カ所を数える。これまでは、比較的地価が安い薄野を中心に出店が進んだが、敷地が品薄になり、価格が上昇したことで土地取得は難しくなっている。一方、大きな投資になるものの、高い利回りが見込まれる札幌駅前周辺での出店を検討する企業が増えた。
三井不動産は、北5条西6丁目にある「三井ガーデンホテル札幌」の東側に約170室を有するホテルの新設を決めた。当初は三井不動産レジデンシャルの分譲マンションを計画していた土地だ。
このほか、西日本鉄道は、道庁そばの北4条西5丁目にある北海道林業会館の建て替えプロジェクトに参入。約300室の準高級ホテルの出店を視野に入れている。
札幌市中心部でのホテルの運営状況について、日本不動産研究所の遠藤公正北海道支社長は「売り上げは、ここ5年で平均4割上がっている」と説明。収益もかなりの高水準で稼働していると分析する。
薄野をはじめとする中心部が地価上昇を続ける中、「取得可能な土地価格などを算定した場合、価格水準から見ると、まだ支払いの余力があるところは多いのでは」と指摘。現在の稼働状況が続けば、ホテル需要は終わらないと予測している。