伊藤組土建・勇建設・一二三北路共同体が定山渓温泉で進める札幌市水道局発注の豊平川水道水源水質保全取水堰新設は、2021年3月までの長丁場の工事。この現場にピンク色のヘルメットをかぶった2人の作業者が花を添えている。協力会社として土工を担う海陸興業(本社・石狩)の佐藤由香利さんと高橋保美さんは、ともにコールセンターのテレフォンオペレーターから華麗なる転身を遂げた、会社期待の重機オペレーターだ。
佐藤さんは42歳。もともと車好きということもあって建設機械に興味があり、海陸興業の詫摩進社長による3度のラブコールを受け、半年前から現場で働いている。
一方の高橋さんは48歳。同じコールセンターで働いていた佐藤さんの誘いを聞き、3カ月前から勤務を始めた。
ともに、テレフォンオペレーターとして10年ほどのキャリアを持っていた。重機オペレーターの誘いを受けた時は「不安が大きかった」(佐藤さん)という。
重機オペは機械操作が中心だが「とはいえ、力仕事も伴うだろうと思っていた。〝今から体力仕事ができるだろうか〟というのが率直な気持ちだった」と振り返る。
男社会のイメージにも二の足を踏んだ。「荒々しい世界で、怒鳴られたりするのではないか心配だった」と佐藤さん。だが実際の現場は、そんなイメージとは180度違った。
入社を歓迎し、海陸興業では2人に特別なユニフォームを用意した。かわいらしいヒッコリー柄で、左胸には「KAIRIKU」と刺しゅうを施した。鮮やかなピンク色のヘルメットもそろえ、2人のコンビ名を〝華やか隊〟と命名した。
女性活躍社会の実現に向け、現場も職場環境の改善へ積極的に取り組んでいる。仮設事務所では男性作業者とは別に、女性用の休憩所やトイレを用意。操作中の張り詰めた気持ちをリフレッシュできるよう、心配りしている。
伊藤組土建の荒井康成所長は「とにかく2人とも一生懸命。自主的に勉強しようという姿勢に、いつも感心している」と話す。
「着ていく服を毎日考える煩わしさがなくなったので、今は楽」と佐藤さん。それでも、休憩所から現場までの移動は手提げバッグを携帯。中には日焼け止めなどが入っており、戦闘前でも乙女心を忘れない。24時間フル稼働で勤務時間の不規則だったテレオペ時代に比べて、建設現場は定時なので肌にも優しいとか。
「早く仕事を任せてもらえるよう期待に応えたい」と佐藤さん。高橋さんは「今は分からない専門用語が多いけど経験を積んで、しっかり機械を動かせるよう頑張りたい」と話していた。