建設新聞で読み解く あのときの札幌

シリーズ「建設新聞で読み解く あのときの札幌」

 ダイナミックな建設投資が行われた1960、70年代の様子を当時の記事とともに振り返ります。e-kensin限定公開の連載です。

第1回「街並みつくった防災建築街区造成」

2018年09月16日 07時00分

 1962(昭和37)年から数年間の北海道建設新聞を見ると、「防災街区」や「防災ビル」といった見出しを伴った記事が連日のように登場する。「防災」とは、市街地の不燃化による再開発を後押しする防災建築街区造成事業のことで、同事業の根拠となる防災建築街区造成法は61年6月1日に制定されている。札幌では、南1条からススキノの札幌駅前通沿いや狸小路地区などを対象に同事業による店舗の共同化(ビル化)が集中的に行われ、今日の街並みを形成した。

 ■サンデパートが第1号

 札幌市における防災建築街区造成事業の第1号は、現在解体工事が行われているサンデパートビル(南2条西3丁目)だ。62年3月26日付の記事によると、建物の名称は「札幌市狸小路三丁目ビル」で、住戸も含まれるため北海道住宅供給公社が発注を担い、主体の入札では鹿島建設が落札している。規模はSRC造、地下2地上9階、延べ1万1838m²。63年7月に完成している。

南3条西4丁目にあった生駒ビル屋上からの風景

 南2条西3丁目で併せて解体が進む、北洋銀行札幌南支店が入っていた札幌南ビル(建設当時の名称は札幌南拓銀ビルあるいは北海道土地ビル、SRC造、地下1地上9階塔屋3階、延べ7655m²)は65年6月に完成。両ビルの完成直後の姿を伝える記事は見当たらなかったが、66年1月1日付元旦号特集の写真に「サンデパート」と「北海道拓殖銀行」の名前があった。「躍進をつづける札幌中心部」とのキャプションが添えられたこの写真の撮影場所は南3条西4丁目にあった生駒ビルの屋上。中央奥が札幌駅。64年に完成した北海道銀行本店(大通西4丁目)の南方向は低層店舗が多く、高い建物が見当たらない。大通以北の駅前通沿いには中高層化されたビルが見受けられるが、大通以南は数少ない。

 ■71年までに40棟が事業化

 都市における災害を防ぎ、併せて土地の合理的利用の増進と環境の改善を目的に制定された防災建築街区造成法。事業は、市町村の申し出を受けて建設大臣が指定する「防災建築街区」を対象に行われ、街区の基本計画は市町村が作成する。その対象となる防災建築物の規模は地上3階(または高さ11m以上)で延べ床面積が原則2000m²以上。事業施行者は原則、土地所有権や借地権を有する者で構成する防災建築街区造成組合となる。公共の福祉に寄与することを目的にしているため、国などが補助金という形で支援。日本開発銀行、住宅金融金庫などは各種の融資制度を設けた。街区の指定から4年以内に行うことが事業の条件となっていた。

 札幌市の対象街区は、「防災建築街区指定計画図」として67年3月2日付で掲載されている。分かりづらいため説明を加えると、南北方向が「西4丁目(札幌駅前通)」沿いの西3丁目と西4丁目の南1条から南6条、東西方向は西1丁目から6丁目の狸小路を挟んだ南北の街区。このほか、南1条西2丁目、南2条西2丁目の街区も含まれる。どの街区も低層の木造建築が密集しており、防火上の観点から不燃化などが求められていた。

防災建築街区を示した図。どの地区も木造の低層店舗が軒を連ねていた

 破線で囲った駅前通沿いの5つの街区は、防災建築街区造成法と同時期に制定された「公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律(市街地改造法)」を適用した事業で、これについては後述する。防災建築街区造成法は市街地改造法と統合され、69年制定の都市再開発法に引き継がれることになるが、防災建築街区造成事業(経過措置を適用した事業を含める)だけで71年までに40棟もの整備が行われた。

 ■最大はラフィラの入るビル

 街並みを一新させた札幌における防災建築街区造成事業。延べ5000m²以上のビルだけでも、第1号のサンデパートビルをはじめ、勧銀ビル(南1条西2丁目)、札幌南拓銀ビル(南2条西3丁目)、南興ビル(南5条西4丁目)、五条ビル(南5条西3丁目)、ニコービル(南3条西2丁目)、富樫そうごビル(南2条西2丁目)、グリーンビル(南4条西3丁目)、コスモビル(南2条西4丁目)、4丁目プラザビル(南1条西4丁目)、金市館ビル(南2条西2丁目)、公楽ビル(南5条西3丁目)、豊陵ビル(南6条西3丁目)、中心街ビル・増築(南2条西4丁目)、札専ビル(南2条西2丁目)、6条4丁目ビル(南6条西4丁目)、すすきの再開発ビル(南5条西4丁目)の17棟。延べ1万m²以上のビルは、現在ラフィラが入る、すすきの再開発ビルの延べ5万3000m²を筆頭に6棟を数える。

 「NIKKA」の広告看板が目を引く、すすきのビル(南4条西3丁目)はSRC造、地下2地上8階、延べ4797m²の規模で、69年に完成している。

駅前通で最大となるラフィラの入るすすきの再開発ビルとすすきのビル(左)

 ■改造法の適用は5地区

 市街地改造法を適用した事業を紹介する。防災建築街区造成法と同様、市街地の再開発を後押しするものだが、法律の正式名称「公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律」が示す通り、公共施設の整備とこれに関連する市街地の改造を合わせて行う方策として法制化された。防災建築街区造成法と大きく異なるところは、事業施行者が自治体であること。地権者間の調整、用地買収、設計の外注、施工業者を選定する入札など全てを自治体が行う。

 札幌市は「札幌駅前通市街地改造事業」として5つの地区でビルを建設。法が示す「公共施設の整備に関連する」に当たるのが、駅前通の南1条-南4条間375mの拡幅整備で、木造低層店舗の不燃・共同化はそれに合わせて行われた。

 1964年以降、記事の頻度が増える。同年3月12日付には「市街地改造ビル実現へ 第一号今年中に着工」との見出しが躍る。市が札幌駅前通の改造事業に約8億円を計上し、本格的に建設に着手するという内容だ。

市街地改造ビルの第1号を伝える1964年3月12日付

 実際に第1地区(南2条西3丁目)の札幌信金ビル(札信・丸美ビル、RC造、地下2地上8階、延べ1万3532m²)が入札となるのは、65年6月14日。防災建築街区造成法適用の1号物件に続き、鹿島建設が落札。金額は1億4200万円だった。この入札はビルの基礎と地下部分を施工するその1工事で、地上部の躯体と付帯工事を対象としたその2工事は9月14日に行われ、同社が6億8600万円で落札している。

 このビルは2016年に建て替えられ、A棟がS造、地下2地上10階、延べ1万771m²、B棟がS造、地下2地上4階、延べ2965m²の2棟から成るビルに生まれ変わっている。設計は前ビルと同じ久米設計。施工は鹿島・岩田地崎建設・玉川組JVが担った。

 ■南1西3の共同ビルで出そろう

 市街地改造によるビル建設は、南3条西3丁目の第2地区(川中・川人ビル、現在のキタコートランプビル、SRC造、地下1地上5階、延べ1246m²)、南2条西4丁目の第3地区(中心街ビル、SRC造、地下2地上9階、延べ1万1020m²)、南3条4丁目の第4地区(エイトビル、現在のアルシュビル、SRC造、地下2地上8階、延べ1万7000m²)、南3条西4丁目の第5地区(シルバービル、RC造、地下1地上4階塔屋1階、延べ2150m²)と続く。

 防災建築街区造成や市街地改造法を適用した事業ではないが、現在札幌パルコが入る、富貴堂などが施主となった南1条西3丁目の共同ビルは75年に完成。このビルの完成によって駅前通沿いの南1条からススキノまでビル群が出そろい、街並みは現在の姿となる。

 ■どれもが再整備の時期に

 63年完成のサンデパートビルから南1条西3丁目の共同ビルまでをたどってきたが、多くのビルが建て替えや耐震改修といった再整備の時期を迎えている。2年前に建て替えを終えた札幌信金ビル(現在の北海道信金本店ビル)に続き、サンデパートビルと札幌南ビルの敷地を一体開発する南2西3南西地区第1種市街地再開発事業(事業主体は同事業組合、特定業務代行者は佐藤工業・岩田建設・岩倉建設JV)が始動。同地区南側の千秋庵ビル跡地ではホテルと店舗が入る複合施設が計画されるなど今後、駅前通を中心に新たな街並みが形成されようとしている。

サンデパートビルと札幌南ビルの跡地で展開される南2西3南西地区市街地再開発事業

 1960、70年代に大きな成長を遂げた札幌市。市の統計を見ると、1960年の人口が52万3839人。61年5月の豊平町との合併を経て、同年は一挙に62万987人に増える。その後、63年70万5037人、64年75万315人、65年79万4908人、66年83万153人と推移し、手稲町と合併した67年は89万8025人に達した。100万人を突破した70年は101万123人。冬季五輪の開催や政令指定都市移行に伴う区制施行があった72年には109万9102人になる。今回紹介した中心市街地のビル建設も都市の飛躍的な発展を象徴する社会資本整備である。シリーズ「建設新聞で読み解く あのときの札幌」では、当時の北海道建設新聞をひもときながら、建設投資が集中的に行われた時代にスポットを当てる。

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