三條肇・十勝総合局南部耕地出張所長に聞く

2018年08月20日 13時00分

■被災農地を早期復旧 関係機関連携、建設業の力も

 2016年夏の台風災害から2年、十勝管内で被災した農地の復旧が6日までに完了した。早期復旧がかなった要因や今後の農業基盤整備などについて、農地災復の監督機関となった十勝総合局南部耕地出張所の三條肇所長に話を聞いた。(帯広支社・太田 優駿記者)

 ―発生から2年で復旧できたポイントは。

 関係機関の連携に尽きる。帯広開建や地元の役場、農協と農家が適切な協力関係を取れたからスムーズに工事が進んだ。さらには被災直後から動いてくれた建設業者や測量設計コンサルタントの力がなければ早期復旧は成し得なかった。

 確かに完了までは2年かかったが、被災農地の95%は17年度中に完成している。このスピードは関係機関が自身と互いの役割を認識した上で行動できたことが大きい。

 17年度の九州北部豪雨では、いまだに多くの災復が不調で手付かずの状態にあり、営農再開できずに離農者が増えていると聞く。実際、災復はお金になる工事ではない。しかし「地域を守る」という建設業の役割意識の高さが今回の十勝では体現された。

 ―復旧の途中ながら17年度は農協取扱高が過去最高を記録した。

 これまでやってきた農業基盤整備の力が奏功したと思う。被災前にもきちっとした整備が成されていて、被災後も帯広開建が64万m³の河川掘削土を無償提供してくれた。農協が中心となって指導や生産調整して、農家も取り戻そうと必死だった。災害だから機関に保証してくれと言うのではなく、みんなが早く直して次の産業につなげようと同じ目標に向かって頑張った証しだ。

 ―早期復旧に農家からはどんな声があったか。

 帯広市の農家は被災当初、復旧までどれくらいかかるかと思っていたが、1年後には工事が完了して作物もきちんと生育しているなんて想像できなかったと感謝していた。芽室町の酪農家は大量の土が流されて自分ではどうにもできなかったが、国と道と町の尽力で予想以上に早く完了して良かったと安堵(あんど)していた。

 ―復旧に当たって苦労した点は。

 発注の立場からだと被害査定にICTを使えなかったこと。当時はまだ導入が難しく、今のように使えたらもっと省力化できたかもしれない。

 業者は資機材や人材の確保に大変苦労したと聞く。資機材は全道からかき集め、業者間でも調整しながらやりくりしていた。

 ―これからの農業基盤整備の展望は。

 これまでの農地災害でやってこなかった土作りの対策が始まる。粘性の高い掘削土を入れたため、農家が長年かけて作った土とは異なることから、土壌調査や営農指導に取り組む。

 粘性のある土壌ではオホーツクのように暗渠排水の要望がよく出る。また災害を踏まえ、あらためて排水路が必要になった所もあるだろう。営農して初めて分かる部分もあるだろうが、農業発展の下支えとして必要な整備を進めることが重要だ。

 三條 肇氏(さんじょう・はじめ)北海道工業大工学部土木工学科卒。1995年に入庁。上川支庁北部耕地出張所を皮切りにオホーツク総合局中部耕地出張所主査、農政部事業調整課設計施工グループ主査など歴任。17年4月から現職。帯広市出身。47歳。

関連キーワード: 北海道庁 災害・防災 道東

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