地域住民を水道施設の維持管理の新たな担い手に―。道立総合研究機構は、富良野市内の地域住民が管理・運営する水道施設を対象に、水質や水道管の状態を把握し行政などによる支援策を検討する研究に取り組んでいる。地元高校生が部活動の一環として協力するなど、地域の人的資源活用という役割も期待されており、人口減少や施設老朽化で自治体の水道事業運営が厳しさを増す中、生活する上で最も重要なライフラインを守るため維持管理の新たな手法を模索している。
内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「インフラ維持管理・更新・マネジメント」分野の研究課題として、2016―18年度の3カ年で取り組んでいるもの。
道総研北方建築総合研究所地域研究部地域システムグループの牛島健主査によると、地域住民が管理する水道施設は道内に数多く存在しているという。富良野市では、公営の水道や簡易水道が届かない農村地域に住む市民が、かつての直轄農業事業で整備された取水施設を引き継ぎ水道として利用していて、10―100戸単位で組合を形成。市が確認しているだけでも18組合が存在するが、重機を持ち簡単な工事ができる農家もおり、修繕などの維持管理を自力で賄えるため、ほとんどの組合は順調に運営できているのが現状だ。
しかし取水施設は整備から40―50年が経過し老朽化が目立ち、人口減少で組合の収入も減少。加えて、水道管の埋設状況も管路図が残されていなかったり、青焼きのため劣化が激しかったりと今後の管理に不安が残る。
こうした課題に対し「地域の人材や資源を生かして行政側からサポートできないか」(牛島主査)と研究を開始。富良野高科学部に所属する1、2年生各2人も取り組みに参加してもらっている。これまでに9回活動を展開し、水道の管路の現況把握を進めてきた。同高参加の調整役を担った富良野市の北川善人上下水道課長は「自分が住む地域を自分で守るという意識を持ってもらいたい。活動を通して研究者との交流もあり、刺激になるのでは」と期待する。
生徒らはSIPの別プロジェクトで開発された簡易なGIS(地理空間情報システム)を活用し、組合員から聞き取った埋設箇所をタブレット端末上の地図に入力。これまでに茜ケ丘、鳥沼、八幡丘、老節布松南、南扇山の5地区で管路図データを完成させた。本年度からは北大のレクチャーも受けた上で水質検査にも着手。別プロジェクトで開発を進めている容易に導入が可能な水質センサーの実証も行っており、維持管理の効率化や自動化を視野に入れている。
研究自体は本年度までとなるが、19年度以降も取り組みは継続し、全ての地域で管路図を完成させたい考え。そのデータは組合へ提供する。
牛島主査は「こうした研究では高専や大学と連携するケースは多いが、高校生が参画するのは珍しく、他の研究者も興味深いと話している。成果品のクオリティー面では課題があるが、地域に十分役立つものではないか」と話している。