アイヌ民族の伝統継承 釧路市でイオル再生事業がスタート

2018年08月21日 18時00分

 春採湖と阿寒湖のほとりにアイヌの伝統的生活空間復活へ―。釧路市のイオル再生事業が2018年度から始まった。初弾として春採湖畔の旧柏木小隣接地に素材育成地の一部を造成したほか、阿寒湖畔には近く遊歩道整備の一環で木道・木階段を整備する。

 イオルは、アイヌ語で狩猟や採取をする場所を表す。再生事業ではアイヌ民族の伝統文化や生活様式、技術を次世代へ継承していくとともに、それらを広く周知していく拠点の整備を目指す。中核的イオル再生地域には白老、地域イオル再生地域として札幌、旭川、平取、新ひだか、十勝、釧路が選ばれている。

 釧路では、合併前の旧釧路市と旧阿寒町がそれぞれ春採湖周辺と阿寒湖周辺でのイオル再生を求めていたこともあり、この2カ所で取り組む。

 メインは伝承・学習空間の管理や植物育成、儀式・儀礼作法講座、有用素材加工・調理体験などのソフト事業だが、これらに先立つハード事業として春採湖畔の旧柏木小隣接地で自然素材を育成する土地の土壌改良と、伝承・学習空間となる阿寒湖畔のアイヌシアター「イコロ」西側に位置する「ニタイトーの森」の木道整備や看板類の設置を計画している。

旧柏木小(奥)の隣接地では有用植物を栽培する

 アイヌ民族が食用などに利用してきたオオウバユリ、ニリンソウ、イラクサなどの栽培に向け土壌改良する春採湖畔では18年度、予定地のうち829m²で赤土中心の表土を深さ20cmにわたって削り取り、周囲を木枠で囲い黒土を30cm盛り土する工事を6月に発注。篠原園芸が税抜き284万円で落札し、先月から今月上旬にかけて施工した。19年度も同規模の土壌改良を行う。

 阿寒湖畔のニタイトーの森は前田一歩園財団の所有地であり、国立公園内に位置していることから極力人工物の設置を避ける。遊歩道も下草刈り程度にとどめるが、敷地内で沢をまたぐ箇所には延長約8・7m、幅1・5m、地表からの高さ最大80cmの木道と、これに接する延長約2m、幅1・5mの木階段を整備する。工事は6月に入札し、熊谷造園が税抜き220万円で落札。今週から約1カ月で完成させる見通しだ。

 このほか18年度は、旧柏木小隣接地やニタイトーの森など3カ所へ看板を設置する。


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