北海道150年を支える~地域発展のストーリー ②新千歳空港

2018年08月21日 11時02分

民営化提案と手腕に期待

■本道経済のけん引役 伸びる国際線、2次交通強化も

 過去最高の乗降客数を更新し続ける新千歳空港。北海道経済のけん引役としての期待を背負い、2020年からの道内7空港一括民間委託に臨む。既に好調な業績を積んでいる新千歳を一段上のステージに発展させ、その効果を全道に波及させることができるか。優先交渉権者の提案内容と経営手腕が注目される。

 17年の乗降客数は2272万人。国内線が1943万人、国際線が329万人の内訳で、国内線は12年の格安航空会社(LCC)就航以降、着実に数字を伸ばしている。国際線はLCCを含む新規就航や増便が相次ぎ、12年以降は前年比20―30%増を続けている。

 活況の要因は複合的だが、近年はインバウンド需要が鍵を握る。新千歳空港事務所では「国際線は伸びしろがある。20年の東京オリンピック以降もインバウンド需要を拡大する施策が続くだろう」と見る。

にぎわうターミナルビル。乗降客は過去最高を更新中

 18年度中に新千歳を拠点化するLCCのピーチアビエーションは、国内・国際線の複数路線の運航に取り組む。8月からは関西―釧路間で就航開始。「既存路線で安定した搭乗率を確保できれば、道内路線も検討する」と路線網拡大に期待を寄せる。

 15年に着工した国内線ターミナルビルの改修は7月に完了。現在は国際線ターミナルビルを拡張中だ。民間委託後は、運営権を獲得したSPC(特別目的会社)の提案次第で、便数増に対応する施設整備がますます進むことが予測される。

 増えた旅客を各地へ運ぶ2次交通の強化も必須で、JR北海道は新千歳空港駅ホームと路線改良を構想。北海道新幹線の新千歳空港延伸も要望されている。

 まちへの影響は、他の空港所在自治体がうらやむ理想像だろう。千歳市が目標としていた20年の人口9万7000人は4月に前倒してクリア。10万人都市へ弾みがついている。

 空港従業員数は08年の5720人から18年4月1日時点で8075人と10年間で40%増を記録。うち6割が市内に住む。国際線ターミナルビル拡張や民間委託後はテナントや便数が増え、一層の雇用増が見込まれる。

 山口幸太郎千歳市長は「新千歳は突出している。北海道全体の底上げをリードする役割がある。運営権者は、世界に通用する空港に引き上げてくれるような提案を」と望む。

本道空の玄関口へ競争

■鉄道駅接続は全国初 道路、港湾とも連携して成長

 樽前山の火山灰地で農作物が育たない上、かつて内陸交通の要衝として栄えたまちがさびれていく。危機感が募る中、小樽新聞社の観楓会を千歳村役場がもてなしたお礼として、同社が飛行機を派遣することになった。

 飛行機が珍しい時代。村民会議で着陸場造成を決め、2日で子ども含め延べ150人が汗を流した。現在の航空自衛隊の滑走路に近い土地を抜根整地した10haの着陸場に北海1号機が降り立った1926(大正15)年10月22日、千歳は空港のまちとして歩み始めた。

 図らずも、千歳は空港適地。ほぼ南北方向の風で横風滑走路は不要、雪や霧も少ない。拡張整備した用地に海軍が目を付け、39(昭和14)年に航空隊基地を設置。51年には千歳飛行場が北海道の空の玄関となる北海道空港に指定される。丘珠飛行場と争うが、雪の量、風向き、整備済みといった理由で千歳に軍配が上がった。

1958年ごろの基地内にあったターミナル(千歳市提供)

 同年のサンフランシスコ平和条約で民間航空が再開し、千歳―羽田間の定期便が運行開始。ターミナルビル建設が望まれる中、61年に北海道空港が設立し、63年に千歳空港ターミナルビルが完成する。

 機材の大型化や増便による旅客拡大に対応し、自衛隊との共用を解消しようと、72年の札幌冬季オリンピックに向けて新たな国際空港整備の構想が浮上。札幌の経済界では札幌に近く、雪は多いが霧は少ない石狩町生振への設置で意見がまとまるが、市は「民間空港は千歳の生命線」と政府や国会に陳情し、手放すことを免れた。経済情勢の影響で着工は遅れたものの、88年に新千歳空港が開港した。

 新千歳は鉄道や道路、港湾整備と連動して発展し、経済活動を支えてきた。飛行機と鉄道が旅客を取り合っていた80年、日本で初めて空港と鉄道駅が接続。今ではJR北海道の経営難の中、増収増益が見込める路線だ。民間機増加や朝鮮戦争による真駒内―千歳基地間の往来激化に対応するため、1年1カ月の突貫工事で国道36号の改良舗装34・5㌔が53年11月に完成。室蘭港や苫小牧港から続く沿道には商業・物流施設が集積する。

 着陸場から飛行場、空港へと周囲を巻き込みながら成長する新千歳は、これからも北海道の推進力であり続けるはずだ。

(建設・行政部 本間愛理記者)


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