北海道150年を支える~地域発展のストーリー

北海道150年を支える~地域発展のストーリー ⑦函館市西部

2018年08月28日 09時30分

居住と観光の融合目指す

■良質な住宅街へ再生 歴史と景観に配慮した町並みを

 異国情緒あふれる街並みで、観光名所として脚光を浴びる函館市西部地区だが、その陰で居住環境に変化が出ている。市は居住と観光が融合した良質な住宅街へと再整備することを決め、西部12町約400haを対象とし、2018年度末までに基本方針を策定する。北海道新幹線が札幌延伸する30年度を見据え、函館発祥の地で定住人口の回復や交流人口を拡大させるプロジェクトが始動した。

 開港によって異国文化が溶け合う街並みへと変貌し、かつては道内一の人口だった函館。歴史的な建造物が町を彩り、繁栄の一途をたどったが、度重なる大火や北洋漁業の衰退などを経て人口の流出が相次ぎ、いつしかそこは旧市街と呼ばれるようになった。

 価値ある建造物は保存され、最近はリノベーションも盛んだが、傾斜地に密集した家屋は朽ちていくばかり。人口減に加えて高齢化率が4割を超え、空き家や空き地が目につく。狭小・未接道敷地の点在や所有者の異なる長屋もあり、宅地統合や区画整理など面的な改善が必要となっている。

観光名所の八幡坂。両端には密集した古い家屋が多く点在する

 「歴史的な建造物が残るだけでは観光客はいずれ来なくなる。人の生活があって、そこに元気な人たちが住んでいることによるにぎわいや活力が必要」。工藤寿樹市長は構想が表面化した17年、記者会見でこう述べた。

 方針案はノーザンクロス(本社・札幌)で検討中。まずは重点地区を設定し、課題を整理した上で再生に取り組む。基盤が整っていて、街区ごとに特色を持つ西部地区について、NPO法人はこだて街なかプロジェクトの山内一男理事長は「独特の濃密なコミュニティーが存在する。そこは守り、新たに住む価値が得られる再生を」と期待する。

 これに先立ち、歴史と景観に配慮したデザイン性の高い街並みを整備する「ガーデンシティ函館」を推進中で、景観まちづくり刷新モデル地区にも指定されている。西部地区はその中心で、道路の美装化や無電柱化、視点場(ビューポイント)整備などを控える。

 全国屈指の観光都市である函館を象徴する西部地区。景観を向上させつつ、住みたくなるようなまちを創造するプロジェクトの行方は、人口減に悩まされる地方都市や観光地の新たなモデルになるかもしれない。

 

趣ある街並みに火災の歴史

■不燃構造で大火克服 広幅員道路やグリーンベルトも

 毎年多くの観光客が訪れる函館市西部地区。真っすぐ海まで延びる坂道やたくさんの歴史的建造物によって趣のある街並みが大きな魅力だ。この特徴あるまちづくりの陰には長い間苦しんだ大火との戦いの歴史があった。

 幕末の開港以来、急速に発展した函館。1935(昭和10)年の国政調査まで札幌を超える道内最大となる20万7480人の人口を有した。

 一方、函館は海に挟まれた地形のため、吹き付ける強い風で火災が広がりやすく、江戸時代から昭和にかけて何度も大火が発生した。最も悲惨な大火として歴史に残るのは34年3月21日に発生した「函館大火」。住吉町から推定瞬間最大風速39mの風にあおられ、22の町が全焼、18の町が半焼したという。当時の人口の約半分を占める約10万2000人が被災した。

大火に苦しんだ函館西部地区。左には1921年の大火で焼失した丸井今井呉服店の再建現場がある(函館市中央図書館提供)

 そこで大火を克服しようと広幅員道路やグリーンベルトの整備、コンクリート構造物の建設が次々と進んだ。

 観光名所として有名な二十間坂は1879(明治12)年、2326戸を焼いた大火後に整備されたもの。道幅が20間(約36m)あり、防火帯の役割を持った。函館大火後は西部地区を含み市内南北に幅員30間(約55m)5路線を、東西に幅員20間1路線をグリーンベルトとして設置。この大胆な緑地帯は今でも市街地の骨格を形作っている。

 さらに不燃構造物としてコンクリートが重宝された。赤レンガ倉庫群近くにある日本最古のコンクリート電柱は木製電柱が火災のたびに引火し、断線したことを踏まえ、当時としては珍しいコンクリートでの建造を選択した。国指定重要文化財の東本願寺函館別院は現存する日本最古のRC造寺院。1806年、29年と大火に遭い、79年には建物が焼失。二十間坂麓の現地に移転したが、1907年、再び大火の被害を受けた。何度も焼失した経験から、当時新工法のRC造での建築に踏み切った。

 度重なる大火に向き合い、今に続く街並みを形成した西部地区。しかし、函館市の人口は1940年に急成長を遂げた札幌市に追い抜かれ80年をピークに減少に転じた。今、人口減や高齢化、空き家という新たな課題を抱える西部地区はさらに魅力ある地区として飛躍するための転換期を迎えている。

(函館支社 菊地康太、福本優香記者)


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