北海道150年を支える~地域発展のストーリー

北海道150年を支える~地域発展のストーリー ⑩創成川通

2018年09月02日 13時00分

交流人口増対応が急務

■新幹線効果を全道へ 札幌都心と高速道アクセス強化

 道都・札幌の交通や物流を支える重要路線として発展してきた「創成川通」。札幌と全道をつなぐ高速道路を、より早く結び付ける整備の具体化に動きだした。北海道新幹線延伸で増加する交流人口を全道に波及させ、集積する都市機能の広域利用を促進するため、早急な都心のアクセス強化が求められている。

 街を南北に直線で貫き、石狩市界の道央新道につながる約14・5㌔の創成川通は、物流拠点のある小樽・石狩方面を結び、新千歳空港など全道をつなぐ高速道路と交わる骨格道路として交通の主軸を担ってきた。

大通公園と交わる付近の創成川通。5月には都心再生を象徴する新ランドマーク「創世スクエア」が完成した

 しかし、都心と高速道路を最短で結ぶ札幌北IC間の4㌔は、途中5つの幹線道路と交わり、冬季は積雪による車線減少もあり車両の速度低下が著しく、IC降り口付近の渋滞は慢性的だ。

 秋元克広札幌市長は「全国の大都市で都心とIC間は約1㌔、数分程度。札幌は夏で15分、冬は20―30分で時間も読めない」と課題を指摘。

 「北海道は広い。都心と道内の移動をスムーズにすることは、人口減少社会の到来で重要性が増す地域の観光、集客、交流に大きな意味を持つ」と訴え、都心と高速道のアクセス強化が急務と強調する。

 札幌の訪日外国人宿泊者数は2017年度に257万人を超え増加基調だ。更新期の都心は再開発の機能集積が進み、30年度末の新幹線延伸により交流人口は42万人純増するとの試算もある。

 冬季オリンピック・パラリンピック招致が実現すれば、国内外から、より多くの人が北海道、札幌を訪れる。これをどう全道に波及させていくか。

 アクセス強化の重要性が共通認識として広がる中、北海道開発局は、道、札幌市と進めた検討を基に7月、事業の計画段階評価に進み、直轄整備の具体化に着手した。

 今後は事業採択への検討が進むが、アクセス性から、地下や高架構造を組み合わせた、高速道路から直結の別線整備案が有力とみられる。

 1分1秒を争う医療搬送、人手不足に悩む物流の効率化など、積雪地にとって交通の時間短縮や安定化がもたらす恩恵は大きい。アクセス強化で人口減少の転換期を迎えた北海道の未来を創成する道となることに期待がかかる。

道都の物流や交通担う

■まちづくりの起点に 冬季五輪前後から本格整備進む

 札幌市を東西に分かつ開拓の象徴・創成川。それに沿って走る街道「創成川通」は、まちづくりの起点であり開拓期から道都の物流や交通を支えてきた。沿道は時代を映す鏡のように絶えず変化を続けるが、役割は150年を経た今も変わらずにいる。

 創成川は幕末の1866(慶応2)年、大友亀太郎が用水目的で建設した「大友堀」が前身。当時の集落郊外を南北真っすぐに流れ、そこから東へ進み伏籠川に注ぐ堀は、その後開拓の礎となった。

 大友は明治維新で主を失い札幌を去るが、「五州第一(世界一)の都」づくりを構想した、明治政府の開拓判官・島義勇は、この堀を東西の基準に定めた。南北は渡島通(現・南1条通)とし堀との交差部、後の創成橋たもとを街路の起点に、まちづくりが始まる。

 島も志半ばで札幌を去るが、その後、堀は創成川と名を変え開拓の象徴になった。「滞在が重なる2人は熱心にまちづくりを語り合ったのではないかと思います」。こう語り、札幌村郷土記念館の玉井晶子さんは、黎明(れいめい)期の歩みを今に伝える。

昭和初期の大通西1丁目から北側の創成川通。西側の洋館は移築前の豊平館(北大大学文書館提供)

 南北を延ばし、船が航行できるよう拡張された創成川は、石狩浜に集まった海運物資を水運で市中に運び開拓を支えた。河岸には創成川通の原型となる街道が整備され、1911(明治44)年には茨戸間に馬車鉄道が開通。物流の主役が陸上に移り、その地位は揺るぎないものとなった。

 創成川通として本格的な整備が進むのは、札幌が近代的な大都市へ飛躍した72年の冬季五輪前後。急増する自動車交通に対応するため、創成川を中央分離帯とし両岸を使った6―8車線道路を設け、都心の国道交差2カ所はアンダーパス化するなど、基盤の高度化が進んだ。

 平成に入ると2011年には都心の混雑解消でアンダーパスを連続化し、片側2車線ずつを地中化した創成トンネルが開通。地上は川の流れや創成橋を復元した創成川公園を設け、憩いの場が復活した。

 都心の通り沿いにはことし、再開発によって新ランドマークビル「創世スクエア」が完成した。更新期を迎えた街は再び大きく変わりつつある。創成橋たもとに鎮座する大友亀太郎像は移りゆくこの景観を静かに見守り続けている。

(建設・行政部 山本浩之記者)


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