耐震化含め大規模改修
■観光拠点機能強化へ 民間技術力活用し着実な施工を
年間60万人の観光客が訪れ、にぎわいを見せる札幌市中央区の道庁赤れんが庁舎。現庁舎が完成するまで80年にわたって本道の中枢拠点として役割を果たしてきたが、築後130年が経過し、老朽化と耐震性の不足が問題となっている。道は、開道150年の歴史を守り、後世に伝えるため、リニューアルに踏み切る。
赤れんが庁舎は、1888(明治21)年に完成。内部・外部ともに老朽化が進んでいるため、耐震化やバリアフリー化を含めた改修を決定した。現状を変更するために、文化庁の求める保存活用計画を策定。現在は、文化財建造物保存技術協会が保存修理やバリアフリー化、リニューアル基本指針に基づく改修、建築設備改修などに関する実施設計を進めている。
れんが造建築物の耐震改修は事例も少なく、技術的に難しい。また、国の重要文化財に指定されていることから、復元性も重要視されるなど、容易ではない。道は、改修工事について、高度な技術力が必要不可欠であり、発注者が仕様を提示することが困難であることから、設計施工一括(デザインビルド)方式の採用を検討している。採用されれば、2019年4月下旬にも高度技術提案型総合評価方式で公告する方針だ。道建設部は、22年度の完成まで整備が長期間に及ぶことから「高度な技術力が必要な工事。民間の技術力を活用して着実に進めたい」としている。
改修後の利用については、飲食スペースなどを整備し、観光拠点としての機能を強化する。1階は地域情報とにぎわいのフロアをテーマに、道内各地の観光情報の発信や地域産品、工芸品を販売する店舗、飲食スペースなどを設置。2階は歴史と文化と題し、赤れんが庁舎の価値や北海道の歴史文化・自然景観の魅力などについて展示する。創造と交流をテーマにした地階は、アートやクラフトなど各種の創作活動、企画展の開催、ワークショップを開催できる場を設ける。また、創建時以来となる中央八角塔の一般公開も予定している。
赤れんが庁舎の西側では道議会庁舎の整備も進んでおり、エリア全体が生まれ変わろうとしている。道庁エリアが本道の一大観光拠点となるリニューアルが期待される。
開拓史伝えるシンボル
■国内有数の大型建築 開道100年記念し創建時へ復元
赤れんが庁舎が産声を上げたのは、今から130年前。八角塔頂部までの高さは約33mと現在の10階建てビルに相当し、建設当時は日本国内でも有数の大きさを誇った。1968年には開道100年を記念して建設当時の姿に復元されるなど、本道の開拓史のシンボルとしての役割を担ってきた。
赤れんが庁舎は、道庁が置かれた1886年に本庁舎本館として、開拓使札幌本庁舎跡地の南側に建設を始め、88年に竣工した。設計は米国留学の経験がある平井晴二郎を主任とした道庁技師が担当し、米国風ネオ・バロック様式のれんが造りを採用している。硬石や木材などの多くは道産品を使用。頂にそびえ立つ八角塔は開拓使札幌本庁舎の八角塔を模した。当時、米国では独立や進取のシンボルとしてドームを載せる建築方式が流行していた。
95年には「風で揺れ動いたため」として中央八角塔などを撤去。1909年には火災で内部と屋根が全焼したが、れんが壁はさほど損傷なく燃え残った。復旧工事は11年に完了し、残されたれんが壁体を再利用して内装と屋根を一新。内装は火災の教訓から防火壁や防火戸、二重窓などの工夫を施した。
68年には、現庁舎の新築に伴い創建当時の姿に復元し、永久に保存することを決定した。建設当初の設計図書は火災で焼失していたが、残された写真などから検討を重ね「外観は創建時にできる限り近いもの」「内部は火災復旧時の形態保存に努める」の2点を基本方針とした。開道100年を記念して同3月8日に着工、10月に完成した。明治時代の洋風建築物は国内でも数少ないことから、翌年3月には国の重要文化財に指定された。
復元改修後は、記念室として公開した旧知事室・長官室を除いて道が使用する庁舎であったが、85年には道立文書館を開設するなど、徐々に一般利用・公開が拡大。現在では国内外から年間60万人が訪れる拠点に成長した。本道の発展の歴史を担った庁舎は、北海道命名150年を契機に生まれ変わろうとしている。先人から受け継いだ財産を次世代につなぎ、観光拠点としてさらに強化していくことが求められている。
(建設・行政部 仲道梨花記者)
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