旭川市水道局は4日、土木遺産に選定されている春光台配水場の覆蓋(ふくがい)付き緩速ろ過池を報道向けに公開した。点検と清掃のため、3年に1度水を抜くタイミングに合わせて実施したもの。完成から1世紀以上経過しているが、大きな損傷もなく、れんがによる美しい連続アーチ構造が巨大空間に広がり、建設当時の様子を今に伝えている。
春光台公園に隣接する近文5線5号に建設された覆蓋付き緩速ろ過池は1910(明治43)年に着工し、13(大正2)年3月に完成。ろ過池を含む一連の施設は、旧陸軍第7師団内でチフスが発生し、衛生的な飲料水確保が急務となったことから、軍用水道として整備した。
現在の石狩川浄水場付近にあった沈砂溝にくみ上げられた水は、春光5条8丁目付近に存在したポンプ室へ自然流下した後、第1配水池へ押し上げられ、この緩速ろ過配水池と隣接する第2配水池を経て、第7師団へ供給された。総工費は45万円で、現在の価値にすると約90億円に上る大事業だった。
第2次世界大戦後、GHQが接収。48(昭和23)年に市へ無償譲渡された。ろ過池は68(昭和43)年に春光台配水場へと改造され、現在に至る。
緩速ろ過池は建造当時、日本最北の水道施設であったことから、冬場に凍結しないようれんが積みアーチによる覆蓋を設け、その上に厚さ60cmの覆土を施した。躯体は無筋コンクリートのため、鋼材の腐食による劣化も見られないという。
ろ過池本体は長さ28・2m、幅58・5m、高さ4・8mの大きさで、容量は7500m³。3区画に分かれ、れんが造りの壁と72本の柱が覆蓋を支えている。
当時、陸軍が有する最高峰の技術が導入された覆蓋付き緩速ろ過池は、水道の技術史上大変貴重なもので、建造後100年目を迎えた2013年、土木遺産に選ばれた。
水道局は「100年前に完成した貴重な水道施設が今も稼働し、市民の生活を支えていることを知ってもらえたら」と話している。