被害全容把握 道遠く 胆振東部地震から1週間

2018年09月13日 07時00分

 6日に本道を襲った北海道胆振東部地震の発生から1週間が過ぎた。厚真町では道内で過去最大となる震度7を観測。震源地の胆振管内ばかりでなく、札幌市や千歳市、日高管内など広範囲で激しい揺れに見舞われた。一夜明けた厚真町は至る所で土砂崩れが起きて想像を絶する光景が広がり、札幌市清田区里塚では液状化で損壊した住宅や道路陥没が多数発生した。さらに、苫東厚真火力発電所が最初の地震から間もなく緊急停止したことが起因して全道的な停電を招き、その後の道民生活と産業・経済活動に大きな影響を及ぼしている。発災から1週間たってもなお応急復旧もままならず、被害の全容も把握できない状況が今回の地震の巨大さを物語る。この1週間で判明した地震被害と、復旧に向けた動きをまとめた。

■土砂崩れ、液状化、大規模停電

 今回の地震による大きな被害の一つが、厚真町の林地などで発生した大規模な土砂崩れだ。被害は厚真、平取、むかわ、日高の4町など広範囲で確認。日高は2カ所だが、厚真町北部を中心とした山林は周囲13㌔で無数の山腹崩壊が起きた。特に厚真町吉野地区を中心とした5㌔四方に集中し、同地区では崖下の民家が巻き込まれ、多くの住民が命を失った。

 原因は、火山堆積物という地質特性や降雨、地震などが複合的に重なったためとみられる。緊急調査で現地を訪れた国土交通省の査定官は、2014年の広島市の土砂災害、17年の九州北部豪雨でも土砂崩れが起きているが「これだけの広範囲という点では国内でかつてない規模」と話した。

 地滑りの復旧について、道では緊急度の高い箇所から治山ダム設置などを検討するが、高橋はるみ知事は国直轄事業としての実施を求める考え。

行方不明者捜索に当たる自衛隊車両が並ぶ厚真町の土砂崩れ現場(8日撮影)

 地震や土砂崩れにより、道路や河川も甚大な被害を受けた。道道は未調査部分も多くあり、被害の全体像が分かるにはまだ時間を要する見通し。ただ、新たに芽生貫気別線など4路線で被害が確認され、判明分だけで20路線68カ所に上る。調査は徐々に進んでいて、被害は増える見通し。自衛隊や消防の作業が優先されるため、道路は崩土除去などの応急復旧も進まない状況にある。

 崩壊した土砂は河川やダムにも流れ込んだ。厚真川では橋梁付近で河道が埋まり、氾濫防止のため土砂除去を急ぐ。厚真川は土砂の除去が12日までに7、8割程度まで進行。しかし、日高幌内川は被害が大きく復旧のめどが立っていない。

 住家などの被害も深刻だ。12日正午現在で住家は全壊54戸を含む165戸、非住家は全壊45戸を含む134戸の計299戸が被災。うち厚真町が220戸を占める。液状化の被害を受けた札幌市はまだ調査中で、相当数になるとみられる。

 苫東厚真火力発電所は6日午前3時8分の地震発生直後に2、4号機が緊急停止した。その17分後には1号機を含めその他の火力発電所も止まったことで、電力の需給バランスが保てず水力発電所など全ての電源が連鎖停止。道内全域約295万戸が停電となった。

 165万㌔㍗の供給力を持つ主力電源の苫東厚真発電所1、2、4号機では、ボイラ損傷やタービンが出火するなどの被害が分かり、「少なくとも復旧には1週間以上かかる」(真弓明彦社長)との見解を示し、停電の長期化が不安視された。

 それでも、6日に水力発電所や砂川発電所3号機を再稼働させ計50万㌔㍗を確保。7日には道内9カ所の火力発電を運転開始させ、北本連系設備による60万㌔㍗の融通で供給力を積み増したことで約162万6600戸の停電が解消した。

 その後、北海道ガスが石狩湾新港に建設した高効率ガス発電所の営業運転を10月から前倒し
て8日午前10時に送電するなど他社の協力もあり約350万㌔㍗を確保。道内全域で電気が戻った。

 時間がたつにつれ、苫東厚真発電所3基の被災状況も分かってきた。1、2号機ではボイラ内部の配管が計13本損傷。4号機は、タービン鎮火後も内部気温が下がり次第、調査を控える。阪井一郎副社長は「今後、損傷箇所は増える可能性がある」とし、想定よりも修理に時間がかかり全面復旧は11月以降に変更した。

 震災前日の最大電力需要は383万㌔㍗に上っていた。このため、さらなる供給力が必要で停止する水力発電の京極発電所1、2号機の再稼働を13、14日に前倒し計40万㌔㍗を確保する予定だ。

 ただ、運転を再開した音別発電所2号機が、11日に7万4000㌔㍗のガスタービンの振動が上昇したことで自動停止しており、老朽施設の稼働リスクが出てきている。苫東厚真発電所が緊急停止した原因も分かっておらず、今後、北電の対応が注目される。

 今回の地震で特に課題として浮かび上がった「土砂崩れ」「都市型災害」「大規模停電」は、条件さえ整えばどこででも起こり得る災害だ。道民の生命と経済・産業活動を守るため、強靱化の在り方をあらためて考える必要に迫られている。


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