先般、北海道を襲いました地震で犠牲になられた方々にお悔やみを申し上げますとともに、地震とそれに続く大停電で、大きな被害を受けられた皆様に、お見舞いを申し上げます。
災害では水、食料の確保が常に問題になります。災害による家屋、交通などダメージによる、心理的な圧迫もあって、水、食料が手元にないと非常な不安に駆られるものです。この心理は非常によく理解できます。
しかし、一部には不安からパニック状態となって、その人に必要な水、食料をはるかに超える量を独占し、それによって安心感を得ようとする人が現れることは、とても残念なことだと思います。
そもそも、人はこうした危機的状況にどのくらい耐えられるのでしょうか?まず、極端なサバイバル状態から考えます。人は、水を全く飲めず、一口の食べ物も得られないとすると、どのくらい耐えられるのでしょうか。それが、3日間、72時間といわれています。災害救助で生存率が急に下がるのが72時間以降というのは、このことを根拠にしています。
では、水が最低限飲めるとしたら、どうでしょうか?こうなると、人の生存は一気に伸びます。全く食べ物を食べずに、水だけでしのいだ人が、40日以上たってもまだ自分で動けるという記録もあります。つまり、水があれば一週間弱は大丈夫だと考えられるのです。
ですから、一日1食ぐらい食べられるとすると、そんなに心配はいりません。停電、交通遮断などが回復するまで辛抱できます。もちろん、子供、お年寄りはもっと短いと考えなければなりませんが。
もちろん、絶食が続いて動けなくなるまで耐えろと言っているのではありません。「一日ぐらい食べられなくても十分耐えられる、無駄に心配することはない」ということを知っていれば、パニックにならないのではないでしょうか。
今回、スーパー、コンビニなどで、手に持ち切れないぐらいの食料を買い込む、体力がありそうな男性、若者を見かけて、なんとも残念な気持ちになりました。一日3食が2食になったとしても、大したことはありません。それを、お年寄りや子供たちに回せないものかと。品切れの棚を見て、残念そうにしているお年寄りを見かけて、なおさらそう思いました。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)