北海道胆振東部地震で大規模な地盤沈下が発生した清田区里塚地区の復旧について、札幌市は原因究明調査と対策の検討に、約3カ月かかるとの見通しを示した。被害は民間の宅地にも及び、市は道路や上下水道などインフラと一体で復旧を目指す方針。ただ、冬場の工事は難しく、住民の合意形成に時間を要すると予想され、本格的な復旧工事は、早くても来春以降となりそうだ。
清田区は6日未明の胆振東部地震で震度5強を観測。強い揺れにより里塚1条1丁目、里塚1条2丁目を中心に宅地や道路、公園で大規模な地盤沈下が発生した。
里塚21号線など8路線で大規模な陥没や舗装の損壊が発生し、現在も通行止め。民間への被害も大きく、312戸ある住宅が地盤沈下の影響で傾きや損傷など110戸で被害があり、うち沈下の激しいエリアの50戸前後は全壊に近いものが多い。
市は専任で対策検討に取り組む里塚地区市街地復旧推進室を設置。13日には清田区体育館で、周辺住民300世帯約500人に被害の状況や対策の方向性を説明した。
非公開の説明会終了後、建設局の天野周治土木部長は記者団に対し、過去事例から対策決定には、ボーリングなどの地質調査に1カ月、有識者を交えた解析と復旧対策の樹立に、それぞれ1カ月の計3カ月を要すると説明。原因究明の上で、道路などの公共施設と宅地を一体的に復旧する考えを伝えた。所有者が原則復旧する宅地や住宅に関しては、「どのような支援ができるかを考えたい」とした。
復旧工事着手は来春以降になることを示唆。「工事まで一定の時間はかかるが、一刻も早い復旧を望む声があり、できるだけ早い対応へ努力したい」と話した。
被害宅地を含む復旧のため、工法確定や住民の合意形成に時間を要することが想定される。
東日本大震災で液状化が発生した千葉県浦安市は、工法確定や合意形成に時間を要し、宅地復旧は7年経過した今も続く。
16年4月の熊本地震で被災した熊本市は被災後、住民負担が原則生じない形で宅地耐震化の市街地復旧を進め、昨年からは液状化対策として1年かけ、地下水位低下工法の検証を進めている。
復興を担当する同市の上野幸威震災宅地対策課長は「対策には時間を要しても慎重な原因究明が必要。これは住民との信頼関係を築く上で重要になる」と話している。