9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震は、震源地の厚真町周辺地域、ひいては全道経済に大打撃を与える震災となった。この被害調査のため、9月12日には土木学会北海道支部と地盤工学会によって、地震災害緊急合同調査団が結成された。同調査団長に就任した室蘭工大の木幡行宏教授(地盤工学専門)に、調査団の果たす役割や、調査の要点などを聞いた。(室蘭支局・高橋 秀一朗記者)
―調査団の成果目標は。
調査団は地盤、地震(構造)、洪水・風水害(河川)、交通、港湾・海岸の各部門に分かれている。それぞれの分野をうまく取りまとめ、総合的に今回の地震を考察するほか、今後における防災、減災への考え方をまとめたい。また、大規模停電による交通インフラへの影響や、港湾関係では耐震岸壁が果たした防災機能などについてクローズアップしたい。
―9月に厚真町で現地調査に参加していたが、被害状況を見た感想は。
発生した地滑りでは表層滑り、土石流、円弧滑りなどいろいろなパターンが見られたが、地質の状態は、上に樽前の火山灰、その下に恵庭または支笏の火山灰という構成で同一。滑っているのは下部の恵庭、支笏の火山灰の地層と思われる。また、かなり高速に滑り落ちたと推測される斜面もあった。
調査中には厚真ダム上流まで行けたが、河川横での地滑りが多かった。河川横では直接的被害がないにしても、大規模な斜面崩落が河道閉塞(へいそく)を引き起こして天然ダムが生じ、2次災害を誘発する。この対策が急務だ。
融雪期には地震がなくても河川横で斜面が崩れる可能性があり、春先に向けた対策が必要。調査団の方で監視モニターを取り付け、河川水位などを見ていきたいと考えている。
―今後の調査における要点は。
直接的な被害が出る幹線道路などでは防災点検が定期的になされているので、こういった区間内では危険箇所が判明し、補強、改良などの対策ができる。一方、斜面の先が河川であったり、人が住んでいない場所では、斜面を守るという発想で災害対策を推進することは難しい。
斜面が崩れたとき、どのように掘削すれば効果的であるか手法を考えたり、何度も地滑りが起きる場所では、別川を設けたりとか、崩れた後の対処を検討することが重要になってくる。
―団長としての抱負を。
本道での直下型地震で最大震度7の発生は、計測史上初めてのことだ。この地震発生のメカニズムにしっかりとメスを入れ、今後の対応、対策に貢献できるよう、報告書をまとめていければと考えている。