建設新聞で読み解く あのときの札幌

シリーズ「建設新聞で読み解く あのときの札幌」

 1960、70年代の札幌では、ダイナミックな建設投資が行われ、今日の発展を支える多くの都市施設が整備されました。当時の様子を北海道建設新聞の記事とともに振り返えるこの連載は「e-kensin」限定の企画です。

第6回「札幌駅前通北街区のビル建設〈西4丁目②〉」

2018年10月21日 09時00分

 今回は札幌駅前通西4丁目街区の北2条から大通までを見ていく。北3条、北4条の街区同様、1950年代から本格的なビル化が始まり、建て替えられたビルも多い。2014年にはオフィスだけでなく多数の商業施設が入った札幌三井JPビル(北2条西4丁目)が開業し、駅前通に新たなにぎわいを創出。創業80年を超える札幌グランドホテルは時代とともに変遷を重ねている。

 ■3棟から成る三井ビル

3棟で構成していた札幌三井ビル(2006年12月撮影)

 2006年12月に撮影した北2条西4丁目の写真を見ると、建て替えられる前の札幌三井ビルの様子が分かる。3棟から成る同ビルは、中央の建物、南隣(写真左)の建物、西隣(写真右)の建物の順に建てられた。

 中央の建物は五番館別館(RC造、地下1地上6階、延べ8781m²、施工は鹿島建設)として1956年に建設され、66年には鹿島建設・三井建設JVの施工で、増築(地下2地上11階、延べ1万4773m²)と改修が同時に完了している。西隣の毎日新聞社北海道支社跡には72年に別館(SRC造、地下1地上10階、延べ約1万m²)が完成。3棟合わせた規模は延べ3万3000m²と道内屈指のオフィスビルとなった。

札幌三井ビルの別館計画と増築・改修を報じた1969年11月29日付(上)と66年11月16日付

 このビルを継承したのが三井不動産と日本郵便による札幌三井JPビル。規模はS一部RC・SRC造、地下3地上20階、延べ6万8192m²。敷地面積は5500m²。地下1階から地上4階までを商業施設「赤れんがテラス」、5階には道庁赤れんが庁舎を一望できる「展望テラス」を配置。6-19階にオフィスを設けた。設計は日本設計と鹿島、施工は鹿島が担い、2014年8月1日に完成している。

 同ビルは、周辺の景観との連続性を持たせた歴史ある風格と都心部ににぎわいを創出した総合的な再生機能が評価され、北3条通の西4丁目部分約100mを活用して整備した「北3条広場」とともに、2015年度の北海道赤レンガ建築賞を受賞している。

 ■前例のない短工期

 札幌三井JPビル南隣の北海道ビルは1962年に完成した。同年12月10日付に「本道建築の金字塔」「竹中工務店の快心作」と見出しを打った記事が載る。

北海道ビルの竣工記事を載せた1962年12月10日付

 三菱地所(設計も同社)が総工費18億円を投じたオフィスビルで、SRC造、地下2地上9階塔屋3階、延べ2万6015m²の規模。61年6月の着工から17カ月で仕上げた。記事は「当初の十八ヵ月竣工という前例のない短期の工程をさらに一ヵ月短縮し十七ヵ月という驚くべく工程をなんなく実行した初のビル建築」と伝えている。

 当時の本道におけるビル建設は、冬季に休止するのが常識となっていたため、このビルの大きさだと、25~26カ月の工期を要するのが通例だったという。冬季の施工には、工事箇所に仮屋根を設け、周囲をビニールシートで覆い、内部を温風で暖房する工法を用いた。

 ■時代に合わせて変遷

 北1条西4丁目の札幌グランドホテルは、道内初の本格的な洋式ホテルとして1934(昭和9)年に開業。時代に合わせながら増築や改築などを繰り返し、今の姿となっている。

 85年発刊の「札幌グランドホテルの50年」(三井観光開発)によると、同ホテルは北海道物産館跡に建設されている。北海道物産館は1918(大正7年)年に札幌で開かれた開道50年記念北海道博覧会の第二会場(工業館)として建てられた建物で、博覧会後は道庁の物産陳列所として使われ、その後、道庁から経営を委託された札幌商工会議所が土産物などを販売していた。

札幌グランドホテル増改築の成契額の見通しを伝える1965年2月8日付

 そんな経緯もあってか、ホテルは西隣に札幌商工会議所を合築した建物(RC造、地下1地上5階、延べ2799坪)となり、ホテル1階には物産陳列所が設けられた。設計・監理は道庁建築グループ、施工は木田組(のちの木田建業)が担当した。

 新館(現在の本館)の開業は66年5月。札幌商工会議所を解体した跡地とその西隣の札幌市水道局舎があった場所を使い増築した。当時の北海道観光ブームを背景とした施設拡充と、64年に札幌市内で開業した札幌ロイヤルホテル(南7条東1丁目)とホテル三愛(のちの札幌パークホテル)への対応策として計画された。65年2月8日付ではSRC造、地下2地上10階、延べ2万6713m²と伝えているが、後に見直され、地上8階、延べ2万2530m²の大きさとなっている。設計は久米建築、施工は鹿島建設。

 ■タイルは「特注品」

 76年12月には創業時の建物(旧館)が建て替えられ、新館(現在の東館)として開業している。SRC造、地下2地上17階塔屋3階、延べ2万8651m²。設計、施工は新館と同じ久米建築、鹿島建設が担った。

 76年1、2月の本紙に掲載された「ユーザーからみた建築採点簿」と題する企画記事で、当時の札幌グランドホテル取締役支配人が「上」「中」「下」の3回にわたって文章を寄せている。

企画記事「ユーザーからみた建築採点簿」に掲載された札幌グランドホテル支配人の寄稿(1976年2月4日付)※クリックで拡大

 その「下」(76年2月4日付)では、同ホテルの特徴でもある外壁のタイルについて触れ、「一枚一枚を特注しており、遠くのほうから見たら一色にみえるが、近くでみるとそれは全部違う」「設計を担当した久米さんの苦心の作(タイル)といえるでしょう。もっともだいぶ焼き直しをさせた」と語っている。

 85年には日本団体生命が札幌市役所跡に建てたビル(現在の北1条アネックスビル)に入る形で別館が開業。現在の建物の構成になっている。

 ■大通西4に重厚な姿

 北1条西4丁目南東角の東邦生命ビル(現在の札幌ノースプラザ、SRC造、地下1地上12階、延べ1万6500m²)は81年に完成。初代の建物は東邦生命の前身の第一徴兵保険によって建てられ、1950年代に2代目に代わり、現在のビルが3代目となる。2代、3代とも久米建築と鹿島建設が設計、施工は手掛けている。

 同じ北1条西4丁目でも北1条通を挟んで南側の街区に立つのが、武田りそなビル。58年完成の旧ビル(RC造、地下1地上6階、延べ7527m²)を改築し95年に完成している。規模はSRC造、地下2地上8階、延べ9747m²。設計、施工は三菱地所と大林組。

 駅前通と大通が交差する大通西4丁目には、石造りの重厚な外観が特徴の札幌大通西4ビルがある。S一部SRC造、地下2地上12階、延べ8324m²の規模で、2013年4月に完成。設計は北海道日建設計、施工は清水建設・岩田地崎建設・中山組・丸竹竹田組・阿部建設・セントラルリーシングJVが担当した。

 オフィス機能のほか、1階と地下2階に石屋製菓の店舗が入る同ビルは、10年に完成した北洋大通センター(大通西3丁目)の商業施設や札幌駅前地下歩行空間と連動しながら、都心部の回遊性向上に寄与している。 

 旧ビルは1958年完成の札幌秋銀ビル。屋上にあった「秋田清酒 高清水」の広告看板が記憶に残る。

2009年4月に撮影した札幌秋銀ビル。駅前通では札幌駅前通地下歩行空間の整備が行われている

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