本格復旧へ準備着々 胆振東部地震発生から1カ月

2018年10月06日 07時00分

 本道で観測史上最大となる震度7を記録した北海道胆振東部地震の発生から、きょう6日で1カ月となった。揺れが強かった地域ではインフラやライフライン、住家などが甚大な被害を受け、大規模停電で道内全域が被災した。この1カ月で被災状況が次々と明らかになり、被害総額は判明分だけで2089億円(5日現在)を超え、今後も増加する見通しにある。断続的な余震で気が抜けない日々が続くが、被害が大きかった地域では2次災害防止や住民生活確保のため応急復旧が進む。道は経験したことのない震災からの復旧・復興に向け、878億円に上る第1弾の対策方針を打ち出すとともに補正予算を可決。10日からは災害査定が始まり、本格的な復旧工事は年内にも動きだす。本道は間もなく長く厳しい冬を迎えるが、被災地が一刻も早い日常を取り戻すためには、まずはインフラ復旧が欠かせない。公共土木施設の応急復旧状況と今後の動きをまとめた。(関連記事2、3、4、9、10面に)

■公共土木施設の応急復旧進む

 公共土木施設の応急復旧は、救助活動箇所を除き震災直後から各所で展開された。道道は268カ所、道管理橋は16カ所で被害があり、一時期15路線22区間を通行規制し、崩土撤去や橋桁の仮固定など対応を進めた。ただ、厚真町の上幌内早来停線では崩落斜面が不安定な吉野地区、崩落が大規模で道路損壊も激しい富里地区は作業が難航。5日午前9時現在でも6路線9区間が通行止めのままだ。

 札幌市内でも東15丁目屯田通では液状化が要因とみられる路面沈下や陥没が発生。直ちに応急復旧に取り掛かり、9月17日に全区間の通行止めを解除した。西4丁目線も、同9日に全区間が通行可能となった。いずれも降雪時まで道路パトロールを強化し、路面状況に応じた補修を実施する。

 河川では10万立方㍍以上の土砂が流入し、降雨時に浸水被害が懸念された厚真川では最大60台もの重機で土砂撤去を進め、現在はおおむね震災前の河道を確保した。

土砂崩れで河道が埋そくした日高幌内川。右側の斜面下が埋まった元の流れ。写真中央部に仮水路を設け応急復旧した(道建設部提供)

 一方で、大規模な山地崩壊に見舞われた厚真川支流の日高幌内川は完全な除去は時間的にもコスト的にも困難とみられている。同じく土砂閉塞(へいそく)を起こしている東和川、チケッペ川、チカエップ川も含めて道は直轄砂防化を要望。国土交通省では補正予算活用もにらみ、直轄事業化を検討しているもようだ。

 ライフライン関係で、水道は厚真町の一部で依然として断水が続く。富里浄水場は停止中で、新町浄水場と上厚真地区浄水場の機能復旧が完了し、復旧率は97%となった。復旧は日本水道協会北海道支部のほか、札幌市など自治体協力を得て進めた。安平町早来地区の北進浄水場は浄水能力が低下。一部で漏水調査が続くが、安平町内全戸で復旧済みだ。

 道は、未曽有の震災から再起を図るため、9月26日に発表した「胆振東部地震からの復旧・復興対策」の中で、ライフライン・インフラ復旧に426億円を措置すると決めた。札幌市は補正予算で167億円の災害復旧費を計上し、インフラ関係に152億円を充てる。また、政府も1日付で激甚災害に指定し、相次ぐ自然災害からの復旧・復興のため、10月下旬にも召集する臨時国会での補正予算成立を急ぐ。

 復旧・復興に向けた財政的な準備は整いつつある。土砂崩壊があった道道上幌内早来停線を皮切りに10日からは災害査定も始まり、本格復旧の兆しが見えてきた。

 本道はこれまで、災害を教訓に強靱(きょうじん)化を着実に進めてきた。しかし、今回も想像を上回る被害が発生し自然災害の脅威をあらためて突き付けられた。今回の地震による死者は41人。被災地の一刻も早い復興はもとより、強靱化の一層の促進を掲げた施策展開が望まれる。


関連キーワード: 災害・防災 胆振東部地震

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