震災復旧・復興の動き 土砂、仮設住宅、自家発電対策は

2018年10月09日 17時00分

 公共土木施設以外にも今回の地震によってさまざまな被害が発生した。厚真町を中心とした大規模な山腹崩壊、土砂が堆積した農地、液状化による住宅の損壊など被害は甚大だ。全道的に発生した停電も道内の経済・産業に大きな影響を及ぼしている。これらの復旧・復興の動きをダイジェストでまとめた。

■農林被害調査進む

 林業被害は、厚真町北部を中心とした13㌔範囲などで発生した。現在は、被害の大きかった地区を対象に、航空レーザー計測によるデータ解析を進めており、10月中旬をめどに完了する。応急対策として大型土のう設置や不安定な土砂・倒木の除去を進めている。今後は人家や道路に隣接した箇所を優先的に整備する。土砂流出を抑えるため、渓流被害箇所は治山ダム、山腹崩壊箇所には土留めを設置するとともに、斜面侵食を防止する法枠の設置などを実施する。

 農地・農業用施設については、無人航空機(UAV)を用いて被害状況の調査を実施しており、10月末まで解析を進める。11月中旬にも災害査定が実施される見通しで、復旧に向けて早急に準備を進めていく。

■住宅など被害対策

 震災は道内各地の建物にも大きな被害をもたらした。5日午前10時半現在、全壊棟数は胆振3町や札幌市などで1407棟に上り、半壊と一部損壊を含めると計1万3983棟に達する。また被災建築物の2次被害を防止する目的で実施した応急危険度判定では、胆振3町と札幌市、北広島市で157棟が「危険」、163棟が「要注意」と判定された。

 札幌市清田区など都市部では液状化による宅地被害も発生。清田区里塚では流動化した土砂が大量に流れる大きな沈下被害があり、インフラを含めた総合対策に向け調査が進んでいる。

 被害状況が明るみになる中、道が胆振3町で仮設住宅1期130戸の建設を決定。札幌市はみなし仮設の提供など被災者の住まいを確保する取り組みも進みつつある。

■停電への対応加速

 道内全域で発生した大規模停電により、店舗やオフィス、工場などが臨時休業を余儀なくされ、地震被害以上に経済への影響は大きかった。電源回復の見通しが立たないことから、施設建築に携わった建設業者に対して、自家発電機の貸し出しを求める声も多かった。

苫東厚真発電所の機能停止により道内全域でブラックアウトが発生した

 道内で、非常用電源を備え入居テナントに供給するBCP対応のオフィスビルは、札幌市内に5棟程度しかない。導入するにも大型投資になるため普及にはまだ時間を要する。

 それでも、今回の停電で防災対応の意識は高まっていると不動産業者らはみており、賃料が高くとも、借り手側は選択枠に入れるケースは増えると予測。今後のビル開発には、非常用電源や備蓄倉庫などBCPに対応したビルがトレンドになるとみる。

 行政も対策に本腰を入れる。道は、災害時の広域的な給油体制を構築するため、ガソリンスタンドに自家発電機を導入する。大規模停電では、都市部などのガソリンスタンドに給油を求める車が集中し、長蛇の列ができた。輸送車両への供給にも混乱が生じたことから都市部を中心に200カ所整備し、冬季の災害時でも供給可能な体制を構築する。


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