自民北海道総合振興特別委前事務局長 中村裕之氏インタビュー

2018年10月20日 17時00分

 事業費で8000億円台に乗せた2019年度開発予算概算要求。北海道胆振東部地震による被害など道内を取り巻く環境は大きく変化しつつある。自民党政調北海道総合振興特別委員会前事務局長として予算編成に携わり、現在文部科学大臣政務官の中村裕之衆議院議員は、防災・減災への注力や全国10兆円規模の特別枠が必要と積極的な公共投資の必要性を説く。(建設・行政部 松藤 岳記者)

 ―新年度予算について。

 19年度の北海道開発予算要求は農林水産分野も充実し、空港も去年大幅に増やしたのをキープした。全体的に積極的に措置している印象だ。

 予算の変動があまりに大きく、経営者は計画的な採用や投資ができないため、先を見通せる当初予算を長らく政府に進言してきた。安定的に伸びており、もっと上のレベルに上げていきたい。

 ただ、東京オリンピックの駆け込み需要が19年度には終わる。働き方改革で労働時間が短縮されて手取りが減る人も出る。さらに、消費増税で内需が減退すれば日本経済へのトリプルパンチだ。

 内需は設備投資、個人消費、政府投資の3要素しかない。政府が内需を支えるべきと議員有志の勉強会で提言してきた。需要落ち込みを考えれば19年度は10兆円規模の投資が必要。デフレを完全に脱却できないのに財政健全化は困難だ。

 現在の便益を減じても将来の便益を最大化するのが投資だ。建設国債で公共投資の増額が重要。高規格道路開通率も本道は全国より25ポイント低い。世界の北海道とうたうが、インフラが脆弱(ぜいじゃく)では実現しない。

 ―災害への備えは。

 胆振東部地震は、道内初の震度7を記録し大規模な林地崩壊やインフラ被害を引き起こした。政府の1次補正予算のうち1000億円規模が北海道の災害対策で、2次補正も視野に入れている。

 札幌市の一部地域で脆弱性が顕在化した。他にも土砂災害危険区域や液状化の危険が指摘される地域もあり、事前の手だては着実に実施する。

 復旧復興とともに、強靱(きょうじん)な国土づくりが必要。ゲリラ豪雨が頻発し、河川の脆弱性が明らかになった。80㍉以上の雨量の発生頻度が1・7倍になっているのに、20年前より治水予算が半減しているという状況には問題がある。

 防災・減災、国土強靱化に政府として投資すべき。安倍晋三総理は今後3年間を防災減災国土強靱化集中投資期間と位置付け、国民の命を守る公共投資を表明していて、国民に必要な政策提言が報われたと感じた。

 16年8月の台風で日勝峠が66カ所も崩落したが、道東道が早期に開通し命の道として機能したという事例からも分かる通り、高規格道路をつなげる必然性は防災・減災の観点からも高い。

 ―道内の交通ネットワークはどうあるべきか。

 生産性の観点から都心アクセス道路が重要。将来札幌駅で新幹線が開通する段階で創成川近くにバスターミナルと高速道路があれば一般道を通らず全道に人を運べる。

 札樽道も時間帯によって新川ICの渋滞が北ICまで続く。西IC付近には工業団地などの拠点があり渋滞解消は重要な課題。新川ICのピンポイント渋滞対策として西ICにも降り口を造れば渋滞が解消し生産性の向上にもつながるはずだ。

 これは将来の冬季オリンピック候補地でもある大倉山近辺にも効果を及ぼす有効な一手。都心アクセス道路だけでは新川ICの渋滞が解消されないので、別な事業として立ち上げる必要がある。

 新幹線は地域経済にとっても起爆剤になることを考えると、残土処理も重要な問題。15年の地下上昇率ナンバーワンが倶知安町のリゾート地、16年が市街地だったことを考えれば、札幌と20分で結ばれる意義は大きい。

 苫小牧市と留寿都村がIR候補地に手を挙げているが、ルスツなら新幹線駅から30分。遊園地やスキーといったレジャーもあるのが強みだ。IRは世界中から富裕層が集まるニセコエリアと結び付けてこそ大きな取り組みになるだろう。

 中村 裕之(なかむら・ひろゆき)1961年2月23日生まれ。道議会議員を経て2012年自民党公認で衆議院議員に初当選。国土交通委員や同党政調北海道総合振興特別委員会事務局長などを歴任し、10月から文部科学大臣政務官。

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