おとなの養生訓

おとなの養生訓 第147回「酔いざめ」 水や睡眠では早まらず

2018年11月09日 07時00分

 「お酒を飲みすぎた。」と思ったとき、皆さんはどういう風に対処されるでしょうか。多くの人は「水をたくさん飲んで、眠る」と答えると思います。水をたくさん飲んで、おしっこをたくさん出せば、酔いが早くさめる。また、眠ってしまえば、目がさめた時には酔いがさめている、と信じているからです。でも、残念ながら水や睡眠で酔いざめが早くなることはほとんどありません。

 アルコールは非常に油に溶けやすい性質を持っています。なので、体内に入ったアルコールは脂肪組織に蓄積しやすいのです。これを分解処理するのは肝臓の働きなので、脂肪組織から肝臓にアルコールが移動しないと分解されません。この過程に時間を要するので、日本酒1合のアルコールを完全に分解処理するのに4時間かかるのです。

 水をたくさん飲むと、おしっこがたくさん出ます。おしっこの中にアルコールが含まれているから、おしっこがたくさん出ればアルコールもたくさん出ると、信じられています。しかし飲んだ水は、血液中の物質は洗い流せますが、脂肪組織中の物質は洗い流せないのです。なにせ、水と油ですから。実際、水を飲んでも、アルコールの分解処理の速度は全く変わらないことが解明されています。

 ニュースなどで、飲酒運転をごまかすために水を飲んだ、云々、ということが書かれていますが、全く効果はなく、徒労に終わることなのです。

 睡眠中は血液循環が下がって、肝臓に到達するアルコールの量が減り、分解処理が進まないことが分かっています。睡眠をとると、アルコールの分解が遅れて、さめてもまだ体にお酒が残っているということも多いのです。

 例えば日本酒を3合飲むと、分解処理には起きていても8時間から10時間程度かかることが分かっています。睡眠を挟むと、翌朝にはアルコールが体に十分残っていて、依然として酒酔い状態であることになります。

 当然、運転すれば飲酒運転です。最近、大量飲酒した翌朝に飲酒運転で逮捕されたり、事故を起こして、飲酒のために厳罰に処されたりする例がニュースになっています。「飲んだら運転しない」は、当夜だけでなく翌朝もそうであることを知ってほしいと思います。飲酒翌朝の運転、心当たりありませんか?お気を付けください。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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