2日から4日まで開催されたエンジン01in釧路の目玉は、3日に釧路公立大で繰り広げられた77もの市民向け講座。テレビや新聞で見掛けるような著名人から間近に貴重な話を聞ける機会とあって、釧路市や近隣地域はもちろん道内外からも多くの受講生が集まり、屋外には地元の味を提供する屋台も出店するなど、さながら学園祭の様相を呈した。市民向け講座の一部を9回に分けて紹介する。
「釧路港、北極海航路の出入り口」
マーケティングコンサルタント 西川 りゅうじん氏
元海上保安庁長官日本空港ビルデング副社長 鈴木 久泰氏
釧路公立大学長 高野 敏行氏
ドリームインキュベータ会長 堀 紘一氏
進行役を務めたマーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏は釧路港について、国際バルク戦略港湾に選定された穀物分野では北米との重要な輸出入拠点であり、地球温暖化の影響で注目されている北極海航路の出入り口に当たる北太平洋の要衝と指摘。
「北極海航路は従来のスエズ運河回りに比べ日数を3割短縮でき、大きなメリットがある。日本では道内を除きこのことがほとんど知られていないが、世界は注目している」と前置きした上で、中国はオーストラリアのダーウィンやスリランカのハンバントタといった港湾で99年間の運営権を取得している実態も報告し、地域として国としてどう考えていくべきかと問い掛けた。
ドリームインキュベータ会長の堀紘一氏は「ほとんどの国は拡張主義」として中国進出への懸念を表明。元海上保安庁長官で日本空港ビルデング副社長の鈴木久泰氏は「中国や韓国の船が北米に向かうときは日本海、津軽海峡、釧路沖を通る。釧路はそれだけ重要な拠点であり、ここをもり立ててうまく使わなくては」と述べ、そのためには穀物バルク以外で、コンテナに積み込むような貨物をどう確保していくかが課題だと説いた。
釧路公立大学長の高野敏行氏は「高いタワーでもあれば大きな港の全貌を見渡せる。観光に生かせるのでは」と提案。
鈴木氏もクルーズで大型船が国内外から入ってきていることを踏まえ、釧路湿原や阿寒湖といった資源を生かして観光振興も図ることで港が活性化すると主張した。
西川氏は「中国が運営権を取得した港では、中国からヒトもモノも持って行くため地元にはほとんど仕事が落ちていない。それでは困るが、中国も世界中の批判は気にしている」とし、マイナス要素を極小化しつつプラス要素を極大化する取り組みの必要性を訴えた。
このほか堀氏は大学運営についても言及し、これから必要な教育はコンピューター、英語、数学、中国語だと助言。
高野氏は、同大の学生がアプリ開発などで全国的な賞を何度も獲得していることや、来年度には中国語の専任教員を招く予定になっていることを伝えた。