安全帯の規制に関する改正政省令が2019年2月1日に施行される。合わせて安全帯性能規格の改正を予定。該当するJIS T8265は9月に改正案が公表され、サンコー(本社・大阪)や谷沢製作所(同・東京)といった主要メーカーは、新規格に対応した次世代型フルハーネスの開発を進めている。新規格移行までの猶予は3年。22年1月2日以降はフルハーネス型でも現行の規格品は使えない。市場の変化を視野にIoT関連事業を展開するエコモット(同・札幌)は、新技術の市場投入を進めている。
厚生労働省は、安全帯に関する労働安全衛生法施行令を19年2月に改正し、これまで一般的だった胴ベルト型から、欧米で主流のフルハーネス型に移行することを原則で決めている。
背景には、高所作業で相次ぐ墜落事故がある。17年は全国で258人の高所作業者が墜落事故によって亡くなった。胴ベルト型の安全帯は、高所から墜落すると腹や胸を圧迫し、死亡に至るケースもあるという。一方、フルハーネス型の安全帯は、肩や太ももなどの複数箇所で体を支えるため、落下時の衝撃を分散できる利点がある。
安全帯の新しい性能規格については3月に改正構造規格案、9月にJIS T8165の改正案が公表された。改正に伴い安全帯の名称は「墜落制止用器具」に変更。厚労省は次世代型フルハーネスの要求性能を表す構造規格について、19年1月ごろの告示を予定している。
安全帯メーカーのサンコーや谷沢製作所は告示を踏まえ、2月以降に新製品を市場投入するとみられる。先行してサンコーは、開発中の商品をカタログ化して販売店などに配布したり、ホームページで公表し、新商品移行への機運を高めている。
スリーエムジャパン(本社・東京)は、17年10月に日本人向けのフルハーネス型安全帯を発売した。今後も製品ラインアップを拡充する予定だが、既存製品でも新規格案が定めている要求性能は満たしているという。
現状のハイエンドモデルは「うっ血防止ストラップ」を搭載。ストラップに足を掛けることで、救助を待つ間の股部分の負担を軽減できる。さまざまな作業の動作に対応するほか、衝撃荷重の分散が期待できる「X型背面ベルト」も特徴だという。
エコモットは、画像解析などの高い演算処理を省電力でできる「エッジAIカメラ」と呼ばれる技術を活用し、フルハーネス型の安全帯が正しく着用されているかどうかを瞬時に調べるシステムを開発中だ。
正面、背面、側面を認識し、ランヤードが正しく取り付けられているかも判定。異常があった場合は警報を出す。同社は「人の目ではなくカメラの画像監視により、作業者がフルハーネスを付けて現場に入っているか確認できる」と、現場の省力化につながる技術として自信をみせる。