建設新聞で読み解く あのときの札幌

シリーズ「建設新聞で読み解く あのときの札幌」

 1960、70年代の札幌では、ダイナミックな建設投資が行われ、今日の発展を支える多くの都市施設が整備されました。当時の様子を北海道建設新聞の記事とともに振り返えるこの連載は「e-kensin」限定の企画です。

第7回「1960~70年代とはどんな時代」

2018年12月09日 07時00分

 1960~70年代は高度経済成長のまっただ中。時代を象徴するイベントとして、64年に東京五輪、70年に大阪万博が開かれ、五輪直前の64年10月1日に東京―新大阪を結ぶ東海道新幹線が開業した。札幌市に目を向けると、71年12月の地下鉄南北線北24条―真駒内間開通や72年2月の冬季五輪開催、同年4月の政令指定都市移行などが挙げられる。60~70年代とはどんな時代だったのか。データを交えながら迫ってみる。

 ■高水準の経済成長

 1956年7月に発行された「昭和31年度年次経済報告(経済白書)」の結語に「もはや『戦後』ではない」との文言が記され、日本経済の急速な回復を印象付けた。高度経済成長期は神武景気が始まった55年からスタートしたといわれ、60年に誕生した池田内閣が所得倍増計画を打ち出し、拍車を掛ける。 

 国内総生産の推移から経済成長率を見ると、60年代は高水準を維持し、年平均で10%を記録。70年代は73年の石油危機(第1次オイルショック)で74年にマイナスに転じるものの、75年には立ち直りプラスで推移した。 経済成長を支えた要因の一つが人口の増加だ。原則5年ごとに行われる国勢調査(47年は臨時調査)のデータによると、戦後直後のベビーブームなどを受け、47年から80年の33年間に3895万人増えた。これに伴い労働力人口が増加し、総務省の労働力調査結果から5年ごとに数字を追うと55~80年の伸び率は平均5.8%となる。

 

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 ■圧倒的な人口の伸び

 そのころの札幌はどうだったのか。道内4市の人口推移を見ると、札幌の圧倒的な伸びに驚かされる。1920年に実施された第1回国勢調査時では函館(14万4749人)、小樽(10万3113人)に続き、第3の都市だった札幌(10万2580人)は、40年の国勢調査で函館(20万3862人)を抜き、全道一となるが、この時点の人口が20万6103人。他都市との差はそれほど大きくない。しかしそれ以降、増加の一途をたどり、他市との差を広げていく。

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 札幌の急激な人口増は、高度経済成長を背景とした都市部への人口集中、エネルギーの主役が石炭から石油に交代した「エネルギー革命」による産炭地からの人口流入、豊平町や手稲町との合併に伴う市域の拡大が主な要因とされる。60年に52万人だった人口は70年に100万人を突破し、この10年でほぼ倍に膨らみ、80年には140万人を超えた。

 北海道全体の人口に対する札幌の割合を見ると、60年は10.4%だったが、65年15.4%、70年19.5%、75年23.2%、80年25.1%と推移し、95年には30%を超えた。札幌への集中は今も続いている。

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 ■新産業都市に指定

 1960年は、前の年に誕生した原田與作市長が「街づくり10カ年計画」を始動した年。人口増加に伴う都市の膨張に対応し、都市整備の水準とスピードを引き上げながら計画的に推し進めるためのもので、総事業費332億7500万円。「街の発展の基盤となる施設」「住みよい街をつくる施設」など5つの方針を掲げ、10年後の人口を56万人と想定した整備を始めた。

 この計画は、62年に成立した新産業都市建設促進法に伴う道央地域の指定を受け見直されることになる。同法は「地方の開発発展の中核となるべき新産業都市の建設を促進し、もつて国土の均衡ある開発発展及び国民経済の発達に資する」ことを目的とし、道央地域の指定は、全国12地域とともに64年4月1日に正式決定。同月15日付を見ると、道と札幌、小樽、室蘭、苫小牧など19の市町村が第1回会合を開き、「建設計画は明年度予算編成前の七、八月ごろまでに基本計画を作成するよう準備を進めていきたい」との方針を確認している。

 札幌市の計画原案が紙面に登場するのが、同年6月9日付。産業基盤整備と都市施設整備に分類され、総事業費は64~70年度まで7カ年で3318億4700万円。内訳は国の直轄事業が488億700万円、道施工分が261億7700万円、市施工事業が1065億3700万円、公社・公団・その他民間施工が1503億2600万円となっている。

新産業都市指定に伴う札幌市の計画概要を掲載した
64年6月9日付※クリックで拡大表示

 ■「100万都市」目標に

 この新産業都市指定を受けて策定されたのが、街づくり10カ年計画を継承する「まちづくり新六カ年計画(札幌市建設6年計画)」(1965~70年度)だ。66年10月10日付には「百万都市目指す札幌」「6カ年に3千億を投入」の見出しが躍り、事業のラインアップを紹介している。柱となるのが道路網の整備。記事は「この計画達成年次の四十五年度には札幌市内には環状線、放射状線を組み合わせた立体的な交通網が整備される。また舗装道も現在の二倍となり百万都市にふさわしいものとなる」と伝える。

 国道5号、12号、36号などの拡幅、水道用水や工業用水を確保するための豊平峡ダムといった国や道が主導する事業も積極的に盛り込み、函館本線の高架化も挙がっている。

まちづくり新6カ年計画の事業内容を伝える
66年10月10日付※クリックで拡大表示

 ■五輪成功と指定都市

 札幌市建設6年計画はその後、1966年4月の冬季五輪招致決定や67年3月の手稲町との合併を契機にさらに修正が加えられ、「札幌建設5カ年計画」(67~71年度)へと引き継がれる。これによって「札幌オリンピックを成功させよう」の合い言葉の下、国家プロジェクトである72年の冬季五輪開催を目標としたまちづくりの体制が整うことになる。

 国や道などが事業主体となるものも合わせた総事業費は6021億円。各種の競技場など直接五輪に関連する施設のほか、北24条―真駒内間の高速軌道(地下鉄)、地下街、全国初の試みとして注目された都心部の地域暖房、豊平川の両岸の堤防を走る豊平川通や河畔道路など、今日の札幌の基礎となる都市整備がこの時期に集中的に行われた。シリーズの第1回などで紹介した市主導による札幌駅前通拡幅に伴う市街地改造事業も五輪開催に照準を合わせた事業だ。

 同時に進められたのが指定都市への移行準備。地方自治法の基準では50万人以上の都市を対象にしているが、札幌では100万人達成を移行の目標に掲げた。100万人は70年に突破。五輪が開催された72年の4月、川崎、福岡の2市とともに指定を受けた。行政区を7つに分け、それぞれ区役所を置いたほか、5つの出張所も設けた。完成当時、全道一の高さを誇っていた現在の市庁舎は69年に着工、70年11月に完成している。

 ■発展とともに予算拡大

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 最後に札幌市の予算の推移を見てみる。1960年度の総額は92億2800万円だったのが、65年度262億5300万円、70年度1191億3700万円、75年度2578億8600万円、80年度は60年度の約62倍に上る5700億5100万円に達した。一般会計の80年度は60年度の約65倍。札幌の急速な発展を裏付ける数値だ。

 71年3月15日付には、札幌建設5カ年計画を締めくくる71年度予算の純工事費が245億3600万円に上り、「初の200億円台に乗った」との記事が載る。70年度比で34.5%増、69年度比では3.3倍。「驚異的な伸びである」と伝える。

純工事費が初の200億円を突破。五輪関連の仕上げの年度でもあることから舗装予算の伸びの高さも記している
(71年3月15日付)※クリックで拡大表示

 次回からは、札幌が大きく躍進するきっかけとなった1972年開催の冬季五輪に焦点を合わせて、紙面をたどっていく。

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