日鉄住金セメント(本社・室蘭)は、重金属不溶化固化材「ランドキープ」を開発した。重金属の不溶化と発生土の強度向上(固化)を両立できるセメント系の対策資材。1回のかき混ぜで2つの効果を出せるため、作業の手間やコスト面でのメリットが大きい。粉体の状態で使え、既存のセメント系土壌改良工法で実用可能だ。シールド工法によるトンネル現場などでの利用を見込んでいる。
ヒ素と鉛の不溶化に効果を発揮する。同時に軟弱土壌を改良できるため、泥土などを処理しやすい。セメント系材料なので吸着材や不溶化材と比べて安価なほか、長期的な安定性が特長。従来のセメント系固化材と同様に粉体混合工法を用いられる。
一般的なセメント系固化材の場合、重金属の不溶化への能力が低い。一方、重金属の不溶化材には土を固める能力がなく、軟弱土壌を改良できないという弱点があった。
さらに、不溶化する汚染土の中にセメントやセメント系固化材由来のカルシウムが大量に存在すると、重金属との反応前にカルシウムと反応してしまう。そのため、汚染土を固化したい場合は最初に不溶化材を混ぜ、数日たった後にセメント系の固化材を混ぜなければならない。施工と養生に二重の手間がかかっているのが最大の課題だった。
ランドキープは1回のかき混ぜで、不溶化と強度アップの効果を同時に出せる。養生期間は短く済むため、施工にかかる費用と期間の両方でメリットが期待できる。
従来型の一般的な固化材は、粘土分が多くなると日数を置いても重金属が溶出するという欠点があった。ランドキープは1m³当たり100―150㌔ほど入れることで、ヒ素の周りを溶出基準以下に抑えられ、強度を出すことができる。
主にシールドトンネルの現場をターゲットにしている。シールドの掘削土は泥状のため、そのままではダンプトラックに運べない。シールド出口でセメントかセメント系固化材を添加して強度を確保し、現場から排出しなければならない。その際に重金属が含まれていると、不溶化が難しい課題があった。
同社製品営業部の高林佳孝次長は「1回で処理でき、費用面と施工面から現場でメリットを出せる」と話している。