「漁業が〝業〟として成り立つ取組」
俳優 辰巳 琢郎氏
釧路市長 蝦名 大也氏
漁業ジャーナリスト 片野 歩氏
京都吉兆社長 徳岡 邦夫氏
フィットネスジムや豪華なラウンジを備えた船―。近年、道内各港で誘致に努めている大型クルーズ船ではなく、ノルウェーの漁船の話。船室は個室が当たり前で乗組員の年収が日本円にして800万―900万円はあり、漁業者の99%が今の仕事に満足している。当然、後継者問題もない。またアイスランドでは、乗組員クラスで2000万―3000万円稼ぐ人もいるという。
日本とはあまりに懸け離れた北欧漁業の現実を突き付けた漁業ジャーナリストの片野歩氏は、それでも1990年ごろまでは日本と大差がなかったと話す。では現在の格差の原因は何か。
日本の水揚げ量は80年代がピークで、その後は激減。しかし世界の水揚げ量は、85年から急増する養殖に引っ張られ右肩上がり。天然は横ばいだが、それは将来を考えてセーブしているからで、つまりは資源管理の違いだと説いた。
進行役を務めた俳優の辰巳琢郎氏は、魚種ごとに総漁獲可能量を定めて資源管理するTAC制度に関し「日本では、政治的突き上げなどで前年の漁獲量より大きい枠が設定されるなど、ばかげたことがまかり通ってきた」と糾弾。
片野氏は、漁業者にも生活があるので漁を控えてもらうには補助金が大事だとした上で「我慢してもらっている間に必ず資源を回復させるという計画も欠かせない」と強調した。
京都吉兆社長の徳岡邦夫氏は、日本で厳格な資源管理ができない一因について「加工業者が雑魚を安く買えなくなるから反対しているという話も聞く」と打ち明けつつ、「小さい魚まで取っていたら大きくならない。乗組員でさえ800万円稼げるというのになぜ日本ではできないのか」と疑問を呈した。
蝦名大也釧路市長は「ノルウェーの水産加工は参考にしてきたが、資源管理まで認識していなかった」と告白し、「道内の漁村でも猿払や尾岱沼は所得が高い。漁業が〝業〟として成り立つよう行政も一緒に取り組み、釧路のうまい魚を守っていきたい」と意気込みを示した。 (おわり)
(この連載は釧路支社の武弓弘和、石黒俊太、沓沢奈美が担当しました)