[企画記事]女性技術者に聞く各社の取り組み

2018年12月09日 15時00分

 「災害に強いまちづくりをめざして」を活動の基本方針に掲げる十勝測量設計協会では、地域に精通した技術者の育成に力を入れている。

 業界の将来を担う若者が仕事選びで重視するのが「職場環境」。福利厚生や待遇だけではなく働きやすさを求める若者にとって、男性や女性の区別なく実力が発揮できる職場は魅力的に違いない。

 十勝の測量設計業界でも女性技術者の活躍が目立つようになってきた。そうした女性たちが仕事に意気込む姿勢や、働きやすい職場づくりへの各社の工夫を座談会形式で探る。

参加者紹介

北王コンサルタント環境設計部技術課主任 児玉純恵さん

ズコーシャ技術部設計二課技師 村山和佳さん

北開水工コンサルタント防災環境部環境計画グループ主幹 佐々木香織さん

北開水工コンサルタント防災環境部川づくり推進グループ主幹 折戸由里子さん

左から児玉純恵さん、村山和佳さん、佐々木香織さん、折戸由里子さん

 ―技術者として活躍するようになった歩みを。

 児玉 東京の大学で農業土木を学んで建設コンサルに就職しました。結婚して出産し、専業主婦をしていましたが夫の転勤で十勝に。2012年に北王コンサルタントに入りました。最初はCAD図面作成のお手伝い程度でしたが15年に社員となり、本年度からは技術系社員として農業土木の調査・設計の主担当をしています。

 村山 15年にズコーシャに入社しました。その前は札幌で下請けのコンサルに勤めていましたが、夫婦で帯広に移住したかったのと、技術士の資格を生かして元請けでの仕事をしたいと思い転職しました。農業土木を担当しています。

 佐々木 帯広畜産大の緑地学研究室で学び、1996年に帯広市内の別のコンサルに入社しました。13年から北開水工コンサルタントにいます。

 折戸 私も畜大で緑地学研究室の先輩に佐々木さんがいて、調査のお手伝いをしたことも。川の生物に関わる仕事をしたいと思っていたところ、コンサルの仕事を知り、環境部門がある北開水工コンサルタントに98年に入社しました。

 ―家庭と技術職の両立は大変では。

 村山 当社では昨年4月からフレックスタイム制が全面的に導入され、子どもの看護休暇や家族の介護休暇、時間単位の有給休暇も充実しています。ことしは北海道なでしこ応援企業にも認定されました。自分の時間をつくりやすいと感じています。

 佐々木 家庭での経験が仕事に役立つ場面も。子育てに人材育成のヒントを見つけたり、夫も同業の仕事をしているので相談に乗ってもらうことはよくあります。愚痴も聞いてもらえますし(笑)

 折戸 私の夫も同業で、家庭で相談していて解決策を見つけることも。繁忙期もお互いに理解しているので、家庭のやりくりもスムーズです。

 児玉 当社でも女性が働きやすくなる各種制度が導入されました。これらの制度により、働く気持ちに余裕ができましたし、今まで以上に段取り良く物事を進める意識が高まり、仕事を効率的に進めるための工夫も増えました。私も夫からのアドバイスを参考にしています。

 ―女性技術者が働きやすい職場づくりの工夫は。

 折戸 時間単位の有給休暇や育児休暇、産休は入社したころからありました。

 佐々木 働きやすい社内環境づくりをさらに一歩進めるため、当社では昨年1月に働き方改革委員会を立ち上げ、その中で女性活躍についても推進しています。具体的な行動計画をまとめているところですが、アンケートなどから平均勤続年数は女性が20年と、男性の18年よりも長く、女性にとって働きづらい環境ではないことが分かりました。それでも世代ごとに人数のばらつきがあり、女性管理職が少ないといった課題も浮き彫りになりました。

 アンケートの中では、部下の家庭事情を上司が配慮してくれている、という回答はたくさん出ています。

 児玉 ことしの春、全ての女性職員に対して、客先協議なども行う業務主担当として働く意思を問うアンケートがありました。希望者には育成プランに従って資格取得支援制度が適用され、技術研修などへの参加も多くなりました。私もこの機会に新たな技術の資格取得に挑戦するため、準備をしています。

 村山 当社は女性が多く、仕事をする上での壁は感じません。打ち合わせに行くことや管理技術者になることも普通にやっています。あと、女性・男性に関わらず、資格取得を積極的に推奨しています。取得すれば報奨金や毎月の手当などが充実するのでモチベーションが高まります。

 ―やりがいを感じた印象深い仕事は。

 児玉 2年前の台風で壊れた排水路の復旧です。芽室町にあるのですが、夜遅くまでかかって設計をしたものが工事を終え、形になっているのを車で通り掛かったときに見掛けました。「ちゃんとできている!」と。

 折戸 班体制を組んで大人数で生物の生育条件を調べたり、生物のデータを、土質や流量観測といった物理環境の計測データと照らし合わせてみるなど、テーマに沿った調査研究をさまざまな部門と協力しながらみんなで仕上げていくところが面白いです。

 佐々木 今まさに手掛けている業務ですが、千歳川の遊水地にタンチョウを呼び戻す取り組みです。生息環境をどのようにすればいいのかを考え、環境教育としてタンチョウの餌になる生き物が遊水地の中にどれぐらいいるのかを子どもたちと一緒に調べたりします。

 女性の技術者が家庭とを両立しながら大きな事業に取り組めるようになるチャンスを開いてもらっていると実感します。そのための職場環境を整えていくことも含めて提案していきたいです。

 村山 牛のふん尿処理施設を担当したことでしょうか。臭いとか、酪農王国・十勝ならではの仕事を実感しました(笑)。

就職希望の女子が増加

建設コンサル業界の「考える会」の活動が奏功

 十勝測量設計協会や帯広建設業協会、帯広開建、帯広建管などが2014年度に立ち上げた「十勝建設産業の未来を考える会」では、建設産業の担い手を確保するため、帯広工高と帯広農高の生徒に対し、学年ごとに「建設産業の仕事」についての説明会を定期的に開いてきた。その結果、測量士補の合格者は14年度には皆無だったのが、17年度は両校で14人に上った。また、帯広工高では2級土木施工管理技術検定の合格率が90%を超えた。このような活動が実を結び、生徒たちも建設コンサルタント業界に注目するようになってきた。

 また、考える会では「女性部会」を立ち上げ、各分野で活躍している女性技術者による女子生徒への特別講義を行ってきた。女子生徒が男社会のイメージが強い建設産業の仕事に就職するに当たって感じている不安や女性が行う仕事の内容などについて、実際に現場で働く女性技術者の方々とフリートーク授業なども行ってきた。その結果、建設コンサルタント業界に就職を希望する女子生徒が増えている。


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