19年度予算編成へ 和泉晶裕北海道局長に聞く

2018年12月12日 18時00分

 2018年7月豪雨や北海道胆振東部地震と相次ぐ災害に見舞われた本道。和泉晶裕北海道局長にインフラ強靱(きょうじん)化など19年度予算編成の考え方を聞いた。(建設・行政部 松藤 岳記者)

■交通網や農林水産基盤も重視

 ―19年度予算編成の見通しは。

 第8期北海道総合開発計画が掲げる「生産空間」を支える重層的な機能分担と交通ネットワーク強化、農林水産業の競争力・付加価値向上及び世界水準の魅力ある観光地域づくりなど着実な推進と併せ、頻発激甚化する災害に対応するため、強靱で持続可能な社会基盤の形成が主要施策だ。

 19年度概算要求は、その具体化のため開発予算全体で1・22倍、一般公共でも1・2倍を要求した。道開発計画が示す食糧供給基地としての持続的発展、観光立国に向けた観光先進国を実現する世界水準の観光地形成、強靱な国土づくりと安全安心な社会基盤形成という3本柱に加え、20年4月1日の民族共生空間オープンに向けた準備経費を最大限積んでいる。

 18年度は空港予算がインバウンド対応で大幅に伸びた。引き続き高い水準を維持し、ターミナル拡張、誘導路整備と20年度のコンセッションに向けた整備を進める。農林水産基盤も1・24倍。農林水産基盤の強化は国力の観点からも重要だ。

 高規格幹線道路は2000年で約500㌔、12年で約1000㌔と急激に延長している。今は3区間同時に計画段階評価をするが、これまで2区間程度だったことを考えれば、高規格への重視が分かるだろう。

 道横断道北見―端野間も尾幌―糸魚沢間も、産業だけでなく国土強靱化の視点から早期の整備が必要。札幌都心アクセス道路は、新幹線札幌開業や、新千歳空港、石狩湾新港、苫小牧港という拠点への接続など物流・観光等に非常に効果の高い道路整備だ。

 環境の世紀といわれている中で自然と共生するアイヌ文化に学ぶことはたくさんあり、固有の文化を復権することにも注力しなければならない。民族共生象徴空間は年間100万人の入り込み客を目標とし、その達成のため、周辺の交通ネットワーク環境整備や阿寒、平取など白老以外の地域への波及効果も重要だ。

■震災復興、インフラ強靱化を推進

 ―胆振東部地震など相次ぐ災害の対策は。

 この地震により震度7を観測した厚真町では、大規模な土砂崩れが発生するとともに、広い範囲で家屋倒壊等の被害が発生した。国土交通省では、スーパーリエゾン(災害対策現地情報連絡員)としてレベルの高い職員をすぐさま厚真町に派遣し、被災状況や支援ニーズ把握の情報収集を実施し、本省との連絡を綿密に行ったところだ。

 10月5日には、今回の地震や今後も懸念される大規模自然災害を見据え、第8期北海道総合開発計画の着実な推進及び復旧・復興並びに国土強靱化を推進するため、北海道局長を本部長とした「北海道局復興・強靱化推進本部」を設け、その受け皿として、北海道開発局長が本部長の「北海道開発局復興・強靱化推進本部」を設置した。

 全国から派遣されたTEC―FORCEにより、河道閉そくの解消、道路啓開や自治体の被災状況調査も支援。被害を受けた日高幌内川の土砂崩落による天然ダム箇所については10月上旬に直轄砂防事業として着手し、室蘭開発建設部に厚真川水系土砂災害復旧事業所を設置して対応している。また農業用水路等の被災調査を進め、早期の復旧を目指している。

 18年度1次補正予算では、胆振東部地震での公共土木施設の災害復旧に必要な経費として国交省が767億円を計上。早期に執行できるよう万全の対応を図る。

 ことしは梅雨前線、台風の影響による風水害にも見舞われた。「北海道は災害が起きる」といった風評被害が懸念される。政府において「重要インフラの緊急点検」が取りまとめられる。これを踏まえた2次補正や19年度当初予算の編成を含め、しっかりと強靱化、防災・減災対策に取り組み、安全・安心を確保していかなければならない。


関連キーワード: 国交省 胆振東部地震

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